性虐待は刑法犯、厳しい罰則 「監護者」の定義に課題なお 法改正、抑止力に期待の半面

西日本新聞

 先月施行された改正刑法では、家庭内の性虐待を念頭においた「監護者性交罪」「監護者わいせつ罪」が新設された。性被害者が13~17歳で、加害者が親など「監護者」の場合、児童福祉法ではなく刑法で罰せられるようになった。性虐待への法整備は一歩前進したものの、親以外からの性虐待など、子どもへの性犯罪に関する課題は山積している。

 刑法の強姦(ごうかん)罪(現・強制性交罪)は、13歳未満は暴行や脅迫がなくても成立してきた。しかし、13歳以上は性交に同意する能力がある「性交同意年齢」とされ、大人の被害者と同様に暴行や脅迫が伴った性交でなければ強姦罪に問えなかった。このため虐待の現場では、13歳以上の子どもに対する性虐待は、より罪の軽い児童福祉法違反として扱われてきた。

 そこで新設されたのが監護者性交・わいせつ罪だ。暴行や脅迫がなくても、被害者が18歳未満で加害者が親など影響力の強い「監護者」である場合、適用されるようになった。

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 福岡市こども総合相談センターで虐待の対応をしている久保健二・こども緊急支援課長は、監護者性交罪などの新設について、「性虐待をきっぱりと“刑法犯”と位置づけた」と好影響を期待する。13~17歳への性虐待の多くは、暴行や脅迫を伴っていないとされ、児童福祉法違反として取り扱われてきたため「加害者にも被害者にも重大な犯罪であると伝わりにくかった」と振り返る。

 今回の改正で、加害者を起訴するために被害者の告訴が必要な「親告罪」ではなくなったことも評価する。被害者によっては幼いころから性虐待を受けて被害意識を持ちにくかったり、「家庭を壊したくない」と被害を話さなかったりする事例もあるからだ。

 福岡市が受理した昨年度の児童虐待件数976件のうち、性虐待は1%程度。例年2%前後を推移するという。「統計上はその程度でも、大人になってようやく告白できるようになるなど、暗数はかなりあるだろう。刑法犯となることで一定の抑止力になってほしい」。ただ「監護者」の定義が曖昧で、例えば同居している母親の恋人などに適用できるのかなど、不確かな要素も多い。

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 子どもの権利に詳しい、NPO法人ふくおか・こどもの虐待防止センター事務局長の松浦恭子弁護士は、今回の改正を「前進した」としながらも不十分だと指摘する。監護者性交罪は、加害者が教諭や家庭教師、部活動の指導者などの場合は適用されないからだ。こうした人は「監護者」と言い切れなくても子どもに強い影響力を持ち、暴行や脅迫がなくても子どもは抵抗できない例が多いという。

 では、子どもを性犯罪から守るためにはどうしたらいいのか。注目したいのは、性交同意年齢の引き上げと、18歳未満に対する性交への細かな規定だ。

 性交同意年齢が引き上げられれば、その年齢未満では、加害者が監護者であろうとなかろうと、暴行や脅迫がなくても刑法で罪に問える。国連の自由権規約委員会による最終見解(2008年)は日本に対し、性交同意年齢を13歳から引き上げるべきだとする所見を採択したが、今回の改正では見送られた。

 先進国では18歳未満に対する性行為について、細かく規定している国も多い。ドイツは性交同意年齢を14歳とした上で、教師や上司、内縁関係の人物などを対象に、その支配関係を乱用した18歳未満への性行為を禁じている。

 今回の改正では、付則に施行3年後の見直し規定が盛り込まれた。松浦弁護士は、性交同意年齢を義務教育卒業程度まで引き上げる必要性を指摘する。「子どもの防御能力や意思決定は、発達過程にある。その弱さにつけこまれないように法で守ってこそ、本当の保護といえる」と、今後の議論に期待を込めた。


=2017/08/29付 西日本新聞朝刊=

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