農産物直売所再開へ始動 日田・やさい工房沙羅「元気な姿見せたい」

西日本新聞

 九州豪雨から5日で2カ月が過ぎた。日田市大鶴地区の住民が運営する農産物直売所「やさい工房沙羅」は、閉店の危機を乗り越え再開に向けて動きだした。豪雨当日、店内に9時間閉じ込められた末に救助された店長の井上営吉さん(72)は一時、再開を諦めかけたが、泥出しを手伝ってくれたボランティアの励ましと、沙羅に野菜を出品してきたお年寄りたちの声が背中を押した。

 7月5日午後3時半ごろ、井上さんは氾濫した大肥川近くの店舗にいた。「水が来たぞ!」。消防団の叫び声に驚き、貴重品を持って外に出ようとすると、あっという間に泥水に囲まれ閉じ込められた。店内で水が渦を巻き、流された冷蔵庫が壁や柱にぶつかる。足も伸ばせない商品陳列棚の上で「川の中にいるような感じ」の恐怖と戦いながら救助を待ち続けた。

 沙羅は地元農協が開いた直売所を、住民らでつくる「大鶴まちづくり協議会」が2008年から引き継ぎ運営してきた。地元農家ら160人が野菜や米などを持ち寄って販売、売り上げの7割は県外客で少子高齢化に悩む地域に、にぎわいと交流を生む施設だった。

 水が引いた後、店内の物はほとんど流され、土砂が1メートル以上堆積していた。井上さんは「正直、もうどうなってもいいかなと思った」という。気落ちする井上さんを前向きにさせてくれたのはボランティアの存在だ。7月中旬、愛知県内の10~70代の約10人がわずか1日で土砂を撤去した。一人一人と握手すると「地域の大切な場所だろうから、絶対に再開してください」と励まされた。

 住民も再開を心待ちにする。手押し車に収穫した野菜を乗せて沙羅に持ち込むのが生きがいという梶原ミズエさん(88)は「野菜を持ち込んで買い物もして、友達と話をする場所。ないと寂しい」と話す。

 井上さんは16日からの3連休までに再開することをを目指す。「楽しみにしてくれる人や応援してくれた人のために辞めるわけにはいかん。(被災地の)元気な姿も見せたいもんね」

=2017/09/06付 西日本新聞朝刊=

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