「親鳥」は住職夫妻 佐賀市の寶琳寺、カラスのひな保護 飛行練習1カ月「早く大空に」

西日本新聞

 佐賀市久保田町新田の寶琳(ほうりん)寺でこの春、1羽のカラスのひなが保護された。林宏明住職(48)と妻の里美さん(50)が寺にちなんで「てら」と名付け、大事に育てている。てらはすくすくと成長し、まるで親鳥のように夫妻に懐いている。愛情は深まるばかりだが、夫妻は「自然の大空に戻れるように」と毎日、てらと飛行訓練を続けている。

 4月7日朝、寶琳寺境内の松の下で巣から落ちたカラスのひな2羽を檀家(だんか)の女性が見つけた。弱っていて寺で保護することになったが、翌日に1羽は息絶えた。生き残った1羽を里美さんはおなかに乗せて温め、猫の餌を少しずつ与えてきた。3カ月がたち、体長は手のひらサイズから40センチほどに育った。

 夫妻が「てらちゃん」と呼ぶと、腕や肩に乗り、里美さんの後をとぼとぼと歩いて追い掛ける。愛情表現なのか、宏明さんの丸刈り頭を軽く突くことも。普段は本堂隣の自宅の居間で過ごし、ベランダ脇に置いた大型の籠で寝る。豚肉やチーズを1日に15回ほど食べ、ふんをあちこちにする。

 宏明さんは「助けたのも何かの縁。生き永らえた命を大切にしたい」と話す。里美さんは「野生のカラスに襲われそうになったこともあり、愛情が増すほど心配になる。それでもやはり自由に生きてほしい」と、てらを見詰める。

 ただ、てらが大空に戻るハードルは高い。5月下旬に境内で飛ぶ練習をさせると高さ7メートルの枝に止まったが、怖くなったのか枝からは飛び立てず「カア、カア」と鳴いた。宏明さんが木に登って助けたが、真っすぐ飛ぶのも難しかった。

 それでも夫妻は諦めず、今月上旬から毎日、本堂の端から端まで約10メートルを飛ぶ訓練を始めた。それぞれの端に夫妻が立ち、交互に「こっちだよ」と呼ぶと、てらは飛ぶ。今では一直線に飛べるようになった。「巣立ちの日」は近づいている。

この記事は2017年06月30日付で、内容は当時のものです。

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