白杖折れる事故多発 視覚障害者の半数、車など接触 通行人とも「命綱と認識して」

西日本新聞

 目が不自由な人が歩行中に、車や自転車と接触するなどして「命綱」の白杖(はくじょう)が折れるケースが全国で頻発している。日本盲人会連合(東京)の全国調査によると、視覚障害者の半数近くが1度は白杖が破損した経験があるという。人身事故へと発展し、被害者になる例も少なくない。視覚障害者側から接触を避けるのは難しく、福岡県盲人協会は「視覚障害者は命懸けの覚悟で外出している現実を知ってほしい」と訴える。

 9月上旬、福岡市・天神の地下街。同市早良区で治療院を営む全盲の吉住寛之さん(43)が1人で歩いていると、誰かに体当たりされたような衝撃を受けた。けがはなかったが、白杖は真っ二つ。「相手は終始無言だった」という。

 車や自転車と接触し、白杖が折れた経験がある吉住さん。2年前には、通行人と接触したはずみで白杖が折れたことが1カ月に3回あり、それを機に、用心のため「いつもの半分」の速さで歩くよう努めている。それでも1日10回以上、歩行者同士で接触するという。

 日本盲人会連合の2013年調査では、回答した視覚障害者457人中、213人(46・6%)が車や自転車と接触して白杖を折られたり、破損したりしたことがあった。歩行者同士の接触による被害も含めれば、さらに多いとみられる。

 昨年10月には、徳島市で盲導犬を連れた男性がトラックにはねられる死亡事故が発生。警察庁の緊急調査によると、視覚障害者が巻き込まれた交通事故は昨年44件あり、死亡3件、重傷12件、軽傷29件だった。

 今年のパラリンピックでも視覚障害者の活躍が注目されたが、「テレビで競技者は応援しても、身の回りの障害者とリンクしていないのがもどかしい」と吉住さん。外国人や高齢者も含め「困っている人に配慮できる社会になってほしい」と願う。

 視覚障害者が困ったときに、白杖を頭上に掲げるSOS合図「白杖シグナル」の普及を図る福岡県盲人協会の池田精治会長(68)は「電車から降りるときに腕を支えてくれる人は増えてきたが、白杖の市民権はまだまだ。もっと訴えていきたい」と話す。

この記事は2016年10月02日付で、内容は当時のものです。

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