【日日是好日】自然の変調を台風に見る 羅漢寺次期住職 太田英華

西日本新聞

 空がだんだんと高く澄み、風はすっかり秋のにおいです。境内では形のきれいな渋柿が実ってきました。今年は豊作でしょうか。醂(さわ)すこともなく、いずれカラスたちの口に入る柿の実たちですが、個性的な形の幹から垂れ下がる姿を、ひとまず私たちに観賞させてくれます。

 今年も彼岸花が、真っ赤に咲きました。「そろそろお彼岸ですよ」と教えてくれます。秋分を過ぎると、次第に日が短くなって秋が深まり、山々が色づき始める。耶馬渓の紅葉シーズンの到来です。

 「どちらからお越しですか」。今年の夏、真っ黒に日焼けしたバックパッカーの男性に本堂前でお会いしました。

 「西表島です」「ようこそお越しくださいました。西表島にずっとお住まいですか」「住み始めて6年です。実はサンゴの研究をしており、絶滅しそうなサンゴを守っています」

 それからしばし、お話をしました。温暖化の影響でサンゴが絶滅の危機にひんしていること。その原因の一つが海水温の上昇で、それに台風が関わっていること。

 先週、大きな台風が襲来して県内にも被害が出ました。最近、日本列島に来る台風は確かに大きい。風も脅威ですが、想像を絶する雨の量におののきます。何かが変わってきている。

 彼は言います。「昔、西表島では大きな台風は当たり前でしたが、最近は経路が変わって来なくなりました。台風でかき回されない海水は温度がどんどん上がり、その結果、サンゴが死んでしまっています」。サンゴは1、2度の海水温上昇で死滅するとのこと。地球温暖化による影響は大気の流れを変え、様々な秩序を乱しています。

 しかし、サンゴに影響しているのは必ずしもそれだけではなかった。西表島に移住して分かったのは、地元の人たちによる開発も影響を及ぼしていることだといいます。

 私は率直にお尋ねしました。「ご自分たちの活動を無駄な抵抗と感じませんか」。すると彼は「やれる人からやらなければ変わりませんから」と。そう言って、「来てよかった。ありがとう」と、さわやかに笑い山を下りて行かれました。

 今回の台風では、羅漢寺周辺にも避難勧告が出て騒然とした雰囲気になりました。大雨の中、外回りや本堂の中を異常がないか点検すると、庫裏の床の間に雨だれを発見。大変! これは屋根の瓦が割れている。

 屋根に上がって割れた瓦を外し予備の瓦をはめ込もうと何度も試みましたが、結局断念しました。新しい瓦を載せるだけでは全く雨漏りは改善せず、結局、大工棟梁(とうりょう)の橋本君に助けを求めました。瓦を変えてもらうと床の間の雨だれはピタッとやみました。

 「やれること」を増やそうと試みた屋根の上の作業でしたが、あまりに無謀でした。「晴れた日に屋根に上がって練習しよう」と反省したのでした。合掌。

 【略歴】1967年、羅漢寺27代住職の娘として生まれる。高校卒業後、大学進学のため上京。20代半ばから40歳で出家するまでフラメンコダンサーとして活動。出家後、愛知県の尼僧専門修行道場で約5年間、僧堂修行し、2013年3月に帰山。現在羅漢寺28代次期住職として寺を守る。


=2017/09/24付 西日本新聞朝刊=

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