「日常失った人の力に」益城町役場入庁26歳 被災体験、古里再生誓う 熊本地震

西日本新聞

 熊本県益城町の自宅で熊本地震の震度7の揺れに襲われ、車中泊や避難所生活を経験した若者が3日、町職員として新たなスタートを切った。被災して取り壊しが決まっている町庁舎で入庁式に臨んだ水田真登さん(26)は、濃紺と深緑の抑えた色合いのネクタイを締め、緊張の面持ち。「一日でも早く日常を取り戻せるよう力になりたい」と、同期20人とともに古里の復興を誓った。

 地震前、町職員になるつもりはなかった。「視野と生活圏を広げよう」と、熊本市や同県合志市など自宅から通える市の職員を思い描いていた。九州大を卒業し、就職浪人中の昨年4月だった。家族と夕食中に見舞われた突然の激震が、進路を変えることになった。

 隣家の瓦が崩れ落ちる雷のような音、不気味な地鳴り。駆け込んだ避難所は人であふれ、1カ月ほど車中泊をした。緊急地震速報が繰り返し鳴り、「もう嫌」と悲鳴を上げる人がいた。町職員に怒りをぶつける人も。絶望に包まれた古里。放っておけないと思った。

 町が一変し、古里で過ごした日常をいとおしく感じた。田んぼと山、季節ごとに景色を変える川。のどかな通学路を自転車で走るのが好きだった。「日常が失われた人たち、壊れかけた地域のために仕事をしたい」。町職員を志した。

 昨秋の試験を経て、この春は例年の2倍を超す21人が新規採用された。復興へ若い力に期待がかかる。3日、西村博則町長から辞令を受け取った。配属先は福祉課高齢者支援係。気持ちが改めて引き締まる。

 間もなく熊本地震から1年。自宅周辺は家屋の解体が進み、更地が目立つ。用水路が破損した地元の農家は、今年も田植えを諦めたという。「理想が実現できず打ちのめされるときも、心を込めて真摯(しんし)に接し、できることに全力で取り組みたい」。1年間、傷ついた古里を見続け、新たに町職員となった一人として背負うものの重さを感じている。 (国崎万智)

この記事は2017年04月04日付で、内容は当時のものです。

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