【花宗川の詩 八女筑後大木大川】(10)ヨシ原 住民努力美しさ戻る

西日本新聞

皇后社裏の水路のヨシ。茎の片側からだけ葉が出ている 拡大

皇后社裏の水路のヨシ。茎の片側からだけ葉が出ている

多くの市民が参加する花宗川のヨシ切り(昨年12月)

 日本の古い呼び名の一つに「豊葦原瑞穂国(とよあしはらのみずほのくに)」がある。豊かにヨシ(葦)と稲穂が実る国という意味だ。大川市の花宗川河口付近ではこの時期、ヨシが黄金色に色づき、秋風に揺れる。この地を訪れた伝説が残る神話のヒロイン神功皇后(じんぐうこうごう)も同じ風景を見たのだろうか。

 花宗川河口から約2キロ上流の大川市北酒見。同地にある神功皇后を祭った皇后社には「片葉のヨシ」伝説が残っている。皇后が都への帰路を指し示すシララサギに導かれ、船を下りてヨシをかき分けて追いかけると、片方の葉が落ちてしまい、以来、この地のヨシは片葉になった-。

 地元の人たちから「オゴドン」の名で親しまれる皇后社。社殿裏の水路に自生するヨシを観察すると、確かに茎の一方からしか葉が生えていなかった。伝説は本当だった! なぜか、この付近のヨシは片葉なのだ。

 ヨシは河川浄化と環境保全に欠かせない植物だ。成長する際に水中の窒素やリンを吸収して水質を浄化。高さ約4メートルに育った群落は鳥をはじめ多くの動物に隠れ家を提供する。今の季節、ヨシ原にはサギが飛来し、盛んに川底のエサをついばむ姿を見ることができる。

 だが、ほんの10年前まで花宗川沿いのヨシは手入れがされず、荒れ放題だった。ヨシの茎を編んで作ったすだれである「よしず」の原料として重宝された時期もあったが、安価な輸入品に押され、枯れたヨシは伐採されず腐ったまま放置され、空き缶や中古自転車が投げ込まれた。

 そんな中で、2007年にヨシ切りを始め、川の浄化に立ち上がったのがNPO法人「愛LOVEおおかわ」のメンバーだ。

 当初は県から「刈った茎が流され、有明海のノリ網に絡まる恐れがある」と難色を示された。代表の後藤利和さん(66)は、下流の明治橋の下に網を張り、茎が流れないよう工夫した。さらに県に働き掛けて、河口近くのヨシ原に放置されていた廃船も撤去、川は美しさを取り戻し始めた。

 冬に枯れたヨシを切るのは、春の芽吹きを促す大事な作業。当初40人程度だった参加者は、今では地元住民や大川樟風高の生徒、国際医療大の学生、自衛隊のボランティアなど200人規模まで膨らみ、12月の恒例行事として定着した。

 「昔ながらの風景を守り、次の世代に引き継いでいきたい」と後藤さん。神功皇后が駆けだしたくなるような川の風景がきっと戻ってくるはずだ。

=2017/10/14付 西日本新聞朝刊=

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