震災置き去り不安 熊本3区益城など加え広大に 復興半ば「声届くのか」

西日本新聞

 公示後初めての週末を迎えた衆院選。区割り変更に伴い広大な面積を抱えることになった熊本3区は、熊本地震の被害が甚大だった自治体が多く「被災地選挙区」とも呼ばれる。最大震度7の「前震」発生から14日で1年半。住まいやインフラの再建は道半ばにあり、政治の役割はなお大きいが、最大被災地の益城町にとっては候補者の顔ぶれが一変、投票所も減った。「置き去りにされないか」。被災者の間でそんな不安が漂う。

 益城町のテクノ仮設団地には、県内最大のプレハブ約500戸が並ぶ。「もう少しお金があれば」と迫田敏子さん(72)は明かす。夫と娘と3人暮らし。「1千万円」をうたう低価格住宅に引かれたが、設備工事や諸経費で1500万円を超すと聞き、踏ん切りがつかない。なお県内には、約4万5千人が仮設などでの仮住まいを続けている。

 「今までより厚い支援を行っていきます」。13日、仮設団地を訪ねた安倍晋三首相は被災地支援に言及したが、演説の大半は北朝鮮情勢などに割かれた。

 町内では体育館などの公共施設も被災しており、投票所は地震前の28カ所から12カ所に減った。首相と握手を交わした女性(72)は「投票所が遠い。ここに造ってくれたらよかった。投票は行かんかも」と話す。

 区割り変更に伴い、熊本県内は小選挙区数が5から4に減り、阿蘇地域を含む3区には益城町など5町が加わった。3区は熊本市を含む1区の13倍、全国最小の東京14区と比べると100倍近く広い。

 女性が応援してきた旧4区の自民前職は今回、比例代表に回った。投票用紙に名前を書いたことがない自民前職と共産新人の二者択一を迫られる。両候補とも震災復興を叫ぶが、女性は「蚊帳の外にいるような気分です」と言う。

 14日、行楽客のマイカーが、南阿蘇村の阿蘇長陽大橋を進む。国が代行して24時間態勢の突貫工事を進め、8月末に復旧した。地元の立野地区で区長を務める上村健さん(67)は早期復旧を歓迎する一方、「道ができると、もう元通りだと思われないか」と懸念する。

 村内のいくつもの集落が再生の道筋を描けないままだ。国の集団移転事業は、小集落にとって「10戸以上」などの条件が高い壁となった。要望した条件緩和は認められず、頓挫した地域もある。

 45世帯の75%が全半壊した同村の沢津野地区。農業の古澤育男さん(80)は人口と農業後継者の減少が気掛かりだ。更地ばかりになった山あいの集落に、どれだけの住民が戻れるのか。

 「1票の格差」を是正する区割り変更。人口比で定数を配分すれば、都会の声を代弁する政治家が増え、地方の代表が減る。山深い被災地にとって、その現実は重い。古澤さんの表情は晴れない。「ここの声は、ますます国会に届きにくくなるんじゃないか」

=2017/10/15付 西日本新聞朝刊=

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