「世襲」有権者の声割れる 「資質の問題」「平等損なう」

西日本新聞

 22日投開票の衆院選で注目している「論点」に、政治家の後援会など選挙地盤を子どもや親族が引き継ぐ「世襲」がある。特に記者が担当する鹿児島県は世襲候補が多いからだ。政治を特定一族の「家業」にしてはならないという批判が根強い半面、大物政治家を育てるには世襲による選挙の強さは「必要悪」との見方もある。衆院選に打って出た安倍晋三首相は代表的な世襲政治家の一人だ。一概に結論の出せる論点ではない。取材で耳にする有権者や選挙関係者の声も割れている。

 鹿児島1区は公示2日前に突然、自民前職ががんの治療専念を理由に引退を表明。秘書だった長男が後継候補に決まったが、地元では「最初から世襲ありきだったのではないか」(地方議員)との疑念があり、選挙戦が始まっても尾を引いているという。

 公示後に開かれる長男候補の個人演説会では、冒頭に父親である前職がビデオメッセージで「交代劇」の経緯を説明。候補本人も各地の演説会を通じて「世襲批判もあるが、全てを背負って進む」と釈明する。

 ただ今回の選挙戦で、他候補陣営が「世襲」問題を強く批判しているとは言い難く、大きな争点として盛り上がってはいない。

 鹿児島県内では近年、類似の動きが続いた。2005年に旧4区で、前回14年には旧3区で、強固な地盤を築いていた自民党衆院議員が息子に引き継いだ。2人は今回、新3区と比例単独の自民党候補として、それぞれ出馬している。

 対立候補を支援した労組幹部によると、旧3区と旧4区でも世襲批判は封印したのだという。「実績のある先代議員を個人攻撃すれば、保守王国の鹿児島では獲得票よりも逃げていく票の方が多い。そこは慎重さが必要になる」と話す。

 世襲に対する有権者の感情もまちまち。鹿児島市役所で期日前投票を終えた女性(31)は「地盤を継いだ候補に資質があるかが問題で、世襲自体が悪いとは言えない」。鹿児島で世襲候補が続くことには「親の代から用意されたものに乗っかった方が、いろんな人に便利だから続くのではないか」と指摘する。

 一方、JR鹿児島中央駅前で野党幹部の応援演説を聞き入った姶良市の男性(75)はこう語った。「国民が選ぶ政治家が同じ家族の中で2代、3代も続くのは立候補する機会の平等性から考えても断固反対。政治に関係が深い人とそうでない人との間で、いろんな格差が生じるはず」

=2017/10/17付 西日本新聞朝刊=

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