ネット選挙、定着は遠く 批評家、濱野智史さん(37)に聞く

西日本新聞

 選挙運動にインターネットの活用が解禁されて4度目の国政選挙。ネット社会を独自の視点で読み解く新進気鋭の批評家の目に、衆院選はどう映る?

 「悪い意味で、ネット選挙の行き着く果てにたどり着いた感がある。候補者の会員制交流サイト(SNS)でのつぶやきや、ニュースで報じられた言動を左右両派がコメントで激しくディスる(けなす)。『ネトウヨ』『ブサヨ』と互いにののしり、議論にならない。双方がSNSで誘い合って街頭演説に押し寄せ、暴力寸前のやじ合戦に発展する。政治参加ではなく、単なるストレス発散。こんなはずじゃなかった」

 「小池百合子さんの失速にしても『排除します』に対する感情的な反発が目立った。言葉の一部が拡散し、炎上するのがネット。今回はマスメディアも同調した。原因が小池さん自身にあるとはいえ、まさに『炎上デモクラシー』だ」

 ネット選挙が充実すれば、双方向の政策論争が活発になると言われたのに、なぜこうなったか。ネットが社会の隅々まで普及する一方、欧米のように政治を議論する文化が根付いていないためだと分析する。

 「けさ、政見放送を見た。候補者のほとんどが『典型的なオヤジ』か『若くて学歴のいいイケメン』で、日本はこの2タイプしか政治家になれないと実感した。女性も子育て中のパパも少ない。『地盤、看板、かばん』の『昭和の選挙』が幅を利かす風土は、ネットで変わるレベルじゃない。だから、選挙権が18歳に引き下げられても若者の関心は高まらない」

 アイドルグループ「AKB48」のファンとしても知られる。AKBの一大イベント「総選挙」に、今後の選挙のヒントがあると強調する。

 「AKBの総選挙に参加して、推しメン(一押しのメンバー)を応援し、固唾(かたず)をのんで結果を待つのがとても楽しかった。リアルな選挙でも運動員は高揚すると聞く。選挙は元来、エンターテインメント性に優れた『祭り』。参加する場面が増えれば関心が高まり、冷静な議論も増える。最近広がる『選挙カフェ』などは、参加型の取り組みとして期待できる」

 「逆説的に言えば、日本がもっと苦境に陥り国民が食えなくなったとき、活発な政策論争が起きるのかもしれない。その際、ネットは有効なツールになる」

=2017/10/19付 西日本新聞朝刊=

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