被爆地覆う「国難」 高校生核容認も 対北朝鮮脅威あおられ 衆院選22日投開票

西日本新聞

 安倍晋三首相が衆院解散の「大義」の一つとして挙げた北朝鮮の核ミサイル問題。各党とも衆院選公約で「北朝鮮への圧力」をうたうが、解決に向けた道筋は示されず、議論は深まっていない。「国難」という言葉が躍る中、平和都市を看板にする被爆地・長崎ですら、核武装容認のささやきが聞こえる。

 「核の傘」に依存する日本の針路はどうあるべきか-。アンケートの質問を読んだ瞬間、長崎市の高校2年の女子生徒(17)の脳裏には、打ち上げられるミサイルや手をたたき笑みを浮かべる北朝鮮トップ、強い口調で非難する安倍首相のニュース映像が浮かんだ。

 17日、女子生徒が通う私立高校で「核の傘」をテーマに平和学習が行われたときのことだ。配られたアンケートの回答は3択。受講した2年生144人のうち3人が「核兵器を開発、保有すべきだ」を選んだ。その一人で来年、有権者になる女子生徒は言う。「ひどいことをする国に対しては、強く出ないといけない」

 最も多かった回答は「米国の傘に依存し続ける」の6割。「傘を抜け、完全な非核国になる」は4割を下回った。

 高校は長崎原爆の落下中心地から約500メートル。2005年度から毎週、平和をテーマに学ぶ。非常勤講師の山口響さん(41)は「北朝鮮に勇ましい言葉を繰り出す政権の姿勢、それを許す風潮が高校生の心理に影を落としている」とみる。

    ◇      ◇

 「北朝鮮の脅かしに屈するわけにはいかないじゃないですか、皆さん」。13日夜、同市の繁華街で演説した安倍首相の言葉に、聴衆の一角が「そうだっ」と呼応、拍手が湧いた。

 2日後、同じ場所に立った蓮舫前民進党代表も「わが国の国難は紛れもなく北朝鮮の脅威、ミサイル発射だ」と訴えた。

 与野党の公約には「最大限の圧力」「断固たる措置」といった言葉が並ぶ。北朝鮮情勢を解散の理由に挙げた安倍首相への批判はあっても、「圧力」路線に関する本格的な議論はない。政治に「白紙委任」するしかないような状況にある。

 11月には長崎県雲仙市で政府と県主催の住民避難訓練が行われる。ミサイルが着弾した「武力攻撃事態」を想定するのは全国初。核廃絶を訴える国際NGOのノーベル平和賞受賞決定に沸いた被爆地も、「国難」の空気に覆われつつある。

 違和感を漏らす人もいる。長崎大核兵器廃絶研究センターの鈴木達治郎さん(66)は言う。「1998年に北朝鮮のミサイルが日本列島上空を飛んで以来、日本はずっと脅威にさらされている。(政治は)ことさらに脅威を強調することで、危機感をあおっていないか」

 「圧力、武力は何も生まない」。長崎市の被爆者、小川忠義さん(73)は論戦にいらだつ。とはいえ、棄権するつもりはない。「いつかは正しい方向に変わるかもしれない。将来のために考えて1票を投じたい」

=2017/10/21付 西日本新聞朝刊=

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