タイで厳しい監視下のはずが… 前首相逃亡、軍が手引き? タクシン派弱体化に好都合 軍政側は火消し躍起

西日本新聞

 【バンコク浜田耕治】タイのインラック前首相(50)が25日の最高裁判決を前に国外に逃亡した。厳しい監視下にあったのに逃走できたのはなぜか。収監を恐れるインラック氏と、混乱を避けたい軍事政権との間に「取引」があり、軍が手助けしたとの見方が広がっている。軍政側は火消しに躍起だが、責任を追及する動きも出ている。

 「政府が法に違反することはしない」。軍事政権の報道官は27日、インラック氏逃亡への軍政の関与を否定する声明を出した。「軍関与説」の広がりに危機感を抱いたためだ。

 インラック氏は判決前々日の23日、タイ東部トラート県から隣国カンボジアに渡ったとされる。その後、シンガポールを経由してアラブ首長国連邦(UAE)のドバイに到着。最終的には英国に滞在する可能性が高いとみられる。

 インラック氏の行動は治安当局に常時、監視されていた。「寺院に行くために外出する際も、車内を捜索されるほど」(関係者)で、当局の追跡をかわすのはほぼ不可能という。

 このため英字紙バンコク・ポストは国外逃亡について、インラック氏が軍政側から「ゴーサイン」を得ていたとの関係者証言を報道した。許可がないと、国境付近の検問所は簡単に通れないとの指摘は多い。

 インラック氏はコメ担保融資制度を巡る裁判で有罪になっても、不服を申し立てる権利があった。急きょ逃亡したのは「収監される恐れがあるとの情報が流れた」との見方が強い。

 軍政側にとっても国外逃亡は「好都合なことだった」(外交筋)。ドバイを拠点に亡命生活を送る兄のタクシン元首相に続き、インラック氏も国内にいなければ、対立するタクシン派の弱体化は必至。判決に伴う混乱も回避できる。地元紙デーリーニュースは双方の間で何らかの取引があった可能性があると報じた。

 インラック氏に批判的な反タクシン派は26日、「軍政の関与なしに国外逃亡はできない」として背後関係を徹底して調査するよう求める声明を出した。職務怠慢の罪で当局者の責任を追及する動きもある。

 プラユット暫定首相は28日、記者団に語気を強めた。「逃亡を助けるなんて、誰がそんなバカなことをする。私を信じてほしい」

この記事は2017年08月29日付で、内容は当時のものです。

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