タイ 政治対立再燃も インラック前首相25日判決 軍政、タクシン派封じ躍起

西日本新聞

 【バンコク浜田耕治】首相在任中のコメ担保融資制度を巡り、国に巨額の損失を与えたとして、職務怠慢の罪に問われたタイのインラック前首相(50)の最高裁判決が25日、言い渡される。厳刑となれば、地方で人気の高いインラック氏や兄のタクシン元首相の支持者らが猛反発し、政治対立が再燃する恐れもある。タイ政治の行方を占う司法判断として注目される。

 「職務を怠ったことはありません」。インラック氏は1日の最終陳述で涙を浮かべながら、改めて無罪を主張した。自らを「政争の犠牲者」とも述べた。

 問題のコメ担保融資制度はインラック政権の公約で、政府が市場価格より5割ほど高く農家からコメを買い取る事実上の補助金。インラック氏は首相在任中の2011~14年、国の損失が膨らむと警告を受けながらも制度を続けた。検察側はこれが職務怠慢に当たると主張している。

 インラック氏はタイで初の女性首相。タクシン派と反タクシン派の対立が深まる中、14年5月に政府高官人事の違憲判決を受けて失職。直後に軍がクーデターを起こし、軍事政権下の15年2月、政治家を裁く最高裁に起訴された。

 同制度を巡っては、コメの横流しなどの汚職が発覚し、国が被った損失は5千億バーツ(約1兆6千億円)との試算がある。

 しかし、地方の農家にとっては「貧しい自分たちを助けてくれた」とインラック氏の人気は絶大。今回の裁判についても、支持者らはインラック氏やタクシン元首相の影響力を排除しようとする軍政の政治弾圧だと批判している。

 このため、判決は今後のタイの政治状況を左右するとみられている。職務怠慢罪は最高で禁錮10年。専門家は「実刑などの厳刑の場合、支持者らの反発は必至。インラック氏は悲劇のヒロインとなり、来年に予定される総選挙では、タクシン派政党に同情票が集まるだろう」と指摘する。

 一方、無罪となった場合は反タクシン派の反発が予想され、軍政の求心力低下にもつながりかねない。

 軍政はタクシン派の封じ込めに躍起で、昨年10月にはコメ制度で発生した巨額損失に絡み、インラック氏に357億バーツ(約1200億円)の賠償金を支払うよう行政命令を出した。同氏は争っているが、軍政は最近になって銀行口座を凍結。新たに11の疑惑でも捜査する構えを見せている。

この記事は2017年08月24日付で、内容は当時のものです。

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