カブトガニ産卵 確認“空振り” 曽根干潟 大量死判明、生態に謎多く

西日本新聞

 絶滅危惧種に指定されているカブトガニが気になる。国内有数の生息地、北九州市小倉南区の曽根干潟で昨年8月、大量死が判明したからだ。「生きた化石」と呼ばれるカブトガニの生態にどんな変化が起きているのか。波打ち際に産卵する姿を見ることができるのは6~8月といわれる。「急いで産卵期に調べねば」と専門家に同行し、曽根干潟へ向かった。

 カブトガニは大潮の時期を中心に曽根干潟の波打ち際へやってくる。20日午前7時、干潟に流れ込む貫川河口(小倉南区曽根新田)で、日本カブトガニを守る会福岡支部顧問の林修さん(65)と待ち合わせた。潮見表によると、隣町の苅田港(苅田町)の満潮は7時27分。海は満ち、干潟はすっかり海の下に姿を隠していた。波は穏やかで天気は快晴。カブトガニの産卵には好条件だという。

 「泡を探すんですよ」と林さんが教えてくれた。カブトガニは産卵時にぶくぶくと白い泡を出すという。河口をじっと見つめると上流から泡が流れていた。30メートルほど川沿いにさかのぼっていくと泡の発生場所を見つけたが、林さんは「この泡は違いますね」と判断。産卵場所となる砂地がないという。

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 最初に定めたポイントでカブトガニは見つからず、次の調査地へ車で移動。干潟に流れ込む朽網(くさみ)川沿いにある25メートルほどの小さな砂浜だ。ここでようやく痕跡を見つけた。直径3ミリの卵の殻が数個、脱皮した小さな抜け殻もあった。

 だが、探索は困難を極めた。「もう、終わりかけですからね」と林さん。例年なら産卵期のピークはすでに過ぎているという。

 ただ、これまでの調査では9月末まで確認できた年もあるという。「その年によって様相が違います。カブトガニの生態はまだまだ分からないことだらけです」との林さんの言葉に望みを託す。

 この日、最後にやって来たのは、干潟南端にある70メートルほどの浜。波打ち際にはカブトガニの死骸が打ち上がっていた。体長48センチ、幅21センチのまだ成体になっていない個体だという。日本カブトガニを守る会福岡支部の調査によると、今年に入ってすでに100匹以上の漂着死骸が見つかっているが、原因は謎のままだ。

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 結局、半日かけて回ったが、産卵する姿を見ることはできなかった。林さんは自身の手帳に「0」と書き込みながら「これも記録ですから」と冷静に語った。

 最後に、地域の人たちが約10匹を育てる「カブトガニ自慢館」という干潟近くの施設を訪れた。水槽の中のカブトガニはじっと砂に埋まっていたり、水中で少し浮き上がったりしていた。

 甲羅の下の12本の小さな足を細かく動かす姿は意外とかわいらしく、疲れが少し癒やされた。大量死の原因が究明され、無事に成長していくことを、その姿を見ながら願った。

曽根干潟小倉南区東部の沖合約5キロにわたって広がる北九州市最大の干潟。面積は517ヘクタール。カブトガニを含む約300種類の底生生物や、約50種類の魚類が生息する生物の宝庫。全国有数の野鳥の越冬地でもある。

この記事は2017年08月26日付で、内容は当時のものです。

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