【異次元豪雨】(3)孤立 同時多発、対応できず

西日本新聞

 九州北部を襲った豪雨は道路を寸断し、福岡、大分両県で数十カ所が孤立した。豪雨災害で、これだけの規模で同時多発的に孤立が起きたことはほとんどなかった。

 大分県日田市の小鹿田(おんた)集落は1週間孤立した。

 「田舎だから米や野菜はある。一番困ったのは水」。地元自治会長の坂本均さん(63)が振り返る。15世帯約30人が残された集落では、井戸水をくむ各家庭の電動ポンプが停電で動かなくなった。

 風呂などにためていた水は調理や飲料で減った。集落では発電機で水をくみ上げたが、その燃料もわずか。極力水を使わないよう、坂本さんは米をとがず、ガスの火で炊いて食べた。「ぬか臭いけど仕方なか」。電気復旧までの3日間、庭の池の水で食器を洗い、風呂も洗濯も我慢した。

 孤立した福岡県東峰村の岩屋地区では、岩屋公園管理棟に二十数人が身を寄せた。周囲を流れるのは茶色く濁った水。近くの湧き水で住民は救われた。ホースで引いて飲用にし、食材を持ち寄ったり防護ネットでシカを捕まえたりして、道路が通じるまでの3日間をしのいだ。

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 特に孤立集落が多かったのは、山の上にある東峰村だった。5地区で最大252世帯706人が身動きがとれなくなった。

 役場は孤立集落の同時多発に対応できなかった。7月5日の夕方から電気も電話も止まり、夜には携帯電話も不通に。職員は約50人。濁流のため庁外に出られず、役場そのものが孤立した。孤立集落がどれだけあるのか、到底把握できない。村職員は「どうしようもなかった」と振り返った。

 雨が落ち着いても二次災害の恐れがあり、職員は容易に孤立集落へ近づけなかった。6日から入った自衛隊などによって徐々に道は開けたが、村全体の孤立解消まで5日かかった。

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 東峰村の山あいにある福井地区と村の中心部を結ぶ道は豪雨による土砂崩れで一時、通行禁止となった。車1台がようやく通れるようになった道は赤茶けた土砂にまみれ、流木や石が散乱する。道路沿いには、スギが傾いた急斜面が迫る。

 復旧した道はまだ危険で、豪雨に耐えた道路も周囲の地盤が緩んでいる。村のハザードマップでは、多くの道路の脇が「土砂災害警戒区域」の黄色に染まっており、その周辺にはさらに危険な赤の区域が点在する。谷あいの道路はおろか、山側の迂回路(うかいろ)まで寸断されて孤立を経験した住民らは、再びの豪雨や台風におびえる。

 対策はあるのか。東峰村のある職員は率直に言う。「災害を防ごうと山を切り開こうにも、財源に乏しい。現時点では、災害が起きそうな場合、3日分ぐらいの食料を自分で準備し、早めに避難所に来てもらうしかない」。避難所に食料などを備蓄する「公助」に加え、住民の「自助」が不可欠だと強く訴えた。

この記事は2017年08月07日付で、内容は当時のものです

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