マンホールのふた人気 大手メーカーのみやき工場から全国へ 多彩なデザイン カードもブームに

西日本新聞

 道を歩きながら、何げなく踏みつけているマンホールのふたをまじまじと見たことはありますか? 法隆寺や富士山、アンパンマン-。よく見ると地域の名所や町のイメージキャラクターなど自治体によってデザインが描かれたものもあり、マンホールのふたを目当てに各地を探訪する人もいるという。ブームになっているマンホールの魅力を探った。

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 マンホールは、下水道や地下ダムなど地下空間に人が出入りする穴で、ふたはこれをふさぐ直径約60センチの鉄の円盤だ。幾何学模様に市章がデザインされた単純なもの以外にランドマークや特産、祭りをデザインしたふたもある。県内では鹿島市が鹿島城址(し)の赤門、基山町が人気の草スキーをする子どもたち、佐賀市はムツゴロウが描かれている。

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 国内シェアの約6割、国内最大を誇るふたのメーカーが日之出水道機器(福岡市)。同社最大の佐賀工場(みやき町原古賀)を訪ね、普段は公開していない製造工程を見せてもらった。

 「原料は自動車や造船工場で部品を作ったときに余った金属片などです。電気炉で1500度に熱し、独自の技術で割れにくいダクタイル鋳鉄を作ります」と同社の吉原正敏さん。

 真っ赤に溶けた鉄がパチパチと音を立てて巨大な鍋に流し込まれ、砂型へと注がれる。溶けた鉄は約90分で砂型を外され、丸いふたの形に生まれ変わる。同工場では月に約千トンのふたを製造。1個平均約50キロとして月産2万個の計算だ。

 マンホールのふたは、受け口とぴったり接合させるため、100分の1ミリの精度で研磨した後、樹脂で塗装し完成。だが、近頃人気が高まっている着色したカラーマンホールは、樹脂塗料を塗る一手間が加わる。「自治体さんの意図を実現するために何年もかかってデザインを決める場合もある」という。

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 1日朝、江北町環境課の窓口には開庁するなり大人や子どもが次々と訪れた。目当てはこの日発行されたマンホールカード。ふたにデザインされた町のイメージキャラクター「ビッキー」の由来などが記されている。同町の会社員江口孝則さん(38)は「ブームになっているカードが地元で発行されると知り、もらいにきました。これから集めてみようかな」と興味津々。

 マンホールカードとは、東京にある下水道の広報団体、下水道広報プラットホーム(GKP、東京)が監修し、同じ規格で各自治体が発行するカード。それぞれ、ふたの写真とデザインの解説があり、役所の窓口などで比較的手に入れやすく、集めやすいと評判だ。

 昨年、県内で2番目に発行した神埼市にカードをもらいに訪ねた。同市のふたは特産の神埼そうめんにゆかりがある水車や、名所の九年庵がデザインされている。窓口では「カード持参の方にプレゼント」などと書かれたチラシや観光パンフレットも渡された。ふたを探索に訪れた人に、観光地にも立ち寄ってもらおうという狙いだ。同市には北海道や京都など、遠方からカードをもらいにきた人もいるという。

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 7月30日には長崎市内で「マンホールまつり」が開かれた。長崎県内にあるふたの実物やマンホールカード全種類を展示。子どもからお年寄りまで幅広い人気を集めた。

 マンホールカードの仕掛け人というGKPの山田秀人さん(42)は「今、地方創生が叫ばれ、自治体は地元の売り込みに知恵を絞っています。カードをもらった人がふたに描かれた観光地に行き、写真を撮って会員制交流サイト(SNS)に投稿してくれることで情報発信ツールになるんです」と説明する。

 主催者の一人で「マンホールハンター」を自称する長崎大大学院工学研究科の出水享(あきら)さん(37)は「マンホールの下、奥にあるのは下水道、上水、用水路、電気、ガスなど生活に必要なインフラです。ふたに興味を持つと自然にその下、奥に興味を抱きます。ふたはインフラへの関心の扉でもあるんです」と力説する。

 1枚のマンホールのふたから広がる世界に、期待と注目が集まっている。

この記事は2017年08月24日付で、内容は当時のものです。

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