「聞こえない世界」 知ってほしい 久留米市の瀧本さん漫画本出版

西日本新聞

■晴れたり曇ったり…日常をほのぼのと

 ほのぼのとした絵柄で、「聞こえない世界」を生きる素直な気持ちを明るく描いた。聴覚障害のある福岡県久留米市の会社員、瀧本大介さん(37)=ペンネーム・平本龍之介=が、自らの半生を漫画にした著書「ひらもとの人生道」を出版した。コンビニや会社、宴席、旅先で…。瀧本さんの日常は、他者の生きづらさにアンテナを張り巡らし、想像し、理解しようとする意識が大事だと気づかされる。それが「ともに生きる」ことなのだと。

 瀧本さんは東京生まれ。生まれた時から耳が不自由で、周りの声は雑音のようにしか聞こえない。相手の唇の動きで話す内容を読み取る「読唇術」や手話、筆談を交えてコミュニケーションする。長女(10)が生まれた後、妻(43)の実家がある久留米市に越してきた。現在は長男(7)、次男(5)を含めて家族5人暮らし。保険会社に勤め、事務の仕事をしている。

 イラストレーターだった父の影響で漫画家になるのが夢だった。プロを目指し、高校卒業後に専門学校に通ったことも。自身のブログに趣味で描いた漫画を公開していたところ、NPO法人川崎市ろう者協会(川崎市)から依頼を受け、2015年7月から、会報に漫画の連載を始めた。

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 連載は月1回、1話16こま。自宅の自室などでiPad(アイパッド)を使って描く。今回の著書は第1巻として、連載の20話まで収録。生い立ちから家族との触れ合いなど心和む話のほか、印象に残るのは「聞こえないから」こそ、できればあと少しの「配慮」があれば、と当事者が願うエピソードだ。

 コンビニで店員がマスクをしていて話が通じなかったり、補聴器をイヤホンと間違えられたり。一時勤めていた企業で「日本語ができていない」と文章の修正を何度も強制され、体調を崩したことや、飲み会の席で話の内容が分からず、周りが笑うと作り笑いでしのいだことも紹介した。

 生まれつき耳が聞こえない人の母語は手話であり、日本語はいわば「第2言語」。助詞や尊敬語などの使い分けが苦手なのはある意味、仕方がない。宴席でも会社でも、例えば常に筆談ができるホワイトボードを用意するなど「情報保障」がなければ、孤独感を募らせることになる。

 ただ作品ではそんな「苦悩」を強調してはいない。「楽しく読んで聴覚障害者と聞こえる人の世界は違うということを、自然に知ってもらいたい」(瀧本さん)と、まず共感を得ることに主眼を置いている。

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 一方で、インドネシアや中国など旅行先で、障害があることで「冷たい」対応をされても正面からコミュニケーションを図り、トラブルに立ち向かった体験なども描いた。「(読んだ人の)日々のやる気を引き出せたら」と瀧本さん。各回の合間に掲載した解説文に、こんな一文を記した。 「正しい道はないし、直感を信じて、人生の道を歩むしかない」-。

 夢を諦めずに挑戦し続ければ、納得いく人生を送ることができると信じるからだ。瀧本さんは「自分の子どもたちも、そうあってくれれば」と目を細める。

 他の団体からも漫画掲載の打診を受けており、随時、寄稿していく予定だ。

 「ひらもとの人生道」第1巻はデザインエッグ社が発行。1400円。アマゾンの通販などで購入できる。漫画は瀧本さんのブログ=https://note.mu/hao2002a=でも公開中。


=2017/11/02付 西日本新聞朝刊=

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