俳句×ショートショートの掛け合わせが想像力を2倍刺激する、前代未聞のコラボ企画

西日本新聞

 俳句とショートショートには共通点がある。五・七・五の十七音、あるいは原稿用紙わずか数ページ分の文字数に物語をギュッと詰め込み、読者の想像力をこれでもかとかき立ててくれるという点だ。そうやって生まれた空想の翼は、読み手の心をあっという間にさらっていく。では、俳句とショートショートが掛け合わされたら一体どうなるのだろう?

 そんな知的好奇心から生まれた前代未聞の企画をまとめたのが、本書『俳句でつくる小説工房』だ。著者は芥川賞作家・又吉直樹氏の「俳句の師匠」としても知られる俳人・堀本裕樹氏と、新世代ショートショートの旗手・田丸雅智氏。田丸氏は若手ながら「ショートショート大賞」の設立やワークショップの開催など、ショートショートの可能性を発掘する活動を精力的に行っている気鋭の作家だ。

 『俳句でつくる小説工房』の企画内容は次の通り。まず、2つの兼題(または自由題)に寄せられた句の中から堀本氏が選句し、選評を加える。そして選ばれた句の中から最もインスピレーションを受けた2句をベースに、田丸氏がショートショートを執筆するという流れだ。多くの作品を手掛ける作家にとってもどんな小説が生み出されるか分からない、ワクワク感に満ちた企画だ。本書には特別編を含め8章分、合計16編のショートショートと特選、秀逸などに選ばれた句が収録されているが、そのどれもがラムネ瓶の中で転がるビー玉のような、不思議な彩りと輝きに満ち満ちている。

 中でも個人的に心惹かれたのが、「ラジオより紙繰る音や秋の夜」という句から生まれた小説「ペーパーノイズ」。俳句を見た瞬間、静まり返った室内に、ラジオのマイクが拾ったペーパーノイズ(台本などをめくる音)が響く様を想像した。リスナーは受験勉強をしている学生だろうか、それとも秋の夜長に読書を楽しむ大人だろうか。パーソナリティーのゆったりとした声が聞こえてくるようだ。そんな空想が、「ペーパーノイズ」ではより奥深い物語に昇華されている。

 同作は、リスナーの人生相談にペーパーノイズで応える奇妙なラジオ番組の話だ。パーソナリティーの「リサ」は、リスナーから寄せられた悩みの深さに応じて紙をめくる。その紙の音が、悩みを解決してくれると専らのうわさなのだ。やがて主人公も、抱え続けた悩みのメッセージを「リサ」へ送り……。この話を含め、全て奇想天外で味わい深い結末が待っている。ぜひご堪能あれ。


出版社:双葉社
書名:俳句でつくる小説工房
著者名:堀本裕樹×田丸雅智
定価(税込):1,512円
税別価格:1,400円
リンク先:http://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-24062-7.html?c=30198&o=date&type=t&word=%E4%BF%B3%E5%8F%A5%E3%81%A7%E3%81%A4%E3%81%8F%E3%82%8B%E5%B0%8F%E8%AA%AC%E5%B7%A5%E6%88%BF

西日本新聞 読書案内編集部

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