慰安婦、徴用工…歴史問題、相次ぎ再燃 文政権誕生、「軍艦島」公開が後押し

西日本新聞

 昨年末、旧日本軍の従軍慰安婦問題を象徴する少女像が日本総領事館前に設置された韓国・釜山市。同地域では今年に入り、朝鮮人徴用工をはじめ日韓の歴史問題を追及する企画展などが相次いでいる。歴史問題で厳しい姿勢を見せる文在寅(ムンジェイン)政権の誕生や、長崎県の「軍艦島」(端島)を舞台とした映画が7月末から公開されたことなどが世論を後押ししている。あらゆる歴史問題の再燃に、在韓の日本人も戸惑うばかりだ。(釜山・竹次稔)

 釜山市北西部に隣接する金海市の仁済大。構内のホールで夏休み中の8月、朝鮮半島から日本への「強制動員」をテーマにした企画展が開かれた。朝鮮人徴用工名簿、工場への出勤記録、在韓の被爆者手帳などの資料が並び、見学に来た4年生の鄭道衍(チョンドヨン)さん(22)は「今の日本人に悪いイメージはないんですけど…」と複雑な表情を見せた。

 中学、高校で日本の植民地支配を学び「もやもやした気持ち」が生じた。大学で歴史本を読み始め、当時の日本への怒りは増したという。「被害者が納得していない未解決の問題があれば、韓国政府はしっかり対処すべきだ。同じように考える同世代は多いと思う」と話した。

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 同展は、釜山市にある「国立日帝強制動員歴史館」が資料を提供し開催した。

 同館は2015年末、盧武鉉(ノムヒョン)政権時代に作られた日韓の歴史の「真相糾明委員会」などが、04~15年の調査で得た資料を展示するため開館。釜山から船で日本へ渡った人が多いため釜山が建設地に選ばれた。来館者は増加傾向にあり、今年は昨年を3万人上回る約10万人の見込み。館内では、朝鮮人徴用工に焦点を当てた軍艦島の特別展示も11月まで開催中だ。

 金右臨(キムウリム)館長(56)は取材に「日本国内に加害の事実に焦点を当てた歴史館が少ないのは大きな問題。私たちの役割は重要になっている」と語気を強めた。来館していた同市の教員李津承(イジンスン)さん(28)は「朝鮮半島内の日本関連の工場で働かされた朝鮮人も多かったと聞く」として、日韓両政府にさらなる調査を求めた。

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 文大統領は8月、1965年の日韓請求権協定では徴用工の個人請求権は消滅していないとの認識を表明。日本政府に懸念が広がった。北朝鮮の核・ミサイル開発を受け、日韓両政府は連携を優先し対立は回避しているが、歴史問題の火種はくすぶったままだ。

 釜山では少女像設置への対抗措置として、日本総領事館が釜山市の主催行事に参加しない状況が続いている。今月18日、韓国労組の全国組織、民主労働組合総連盟が来年5月に少女像の真横に徴用工像を設置する計画を発表し、さらなる懸案が生じている。

 「一度政府間で決めたことを一方的に見直すかのような韓国側の対応はあり得ない」などと批判する在韓日本人は多い。韓国人の中にも少女像設置や請求権問題について懸念する声も一部にあるが表立った主張とはなっていない。

 親日的な人も多い釜山だが、歴史問題の再燃が影を落としている。釜山に数年暮らし、旅行観光業に携わる日系企業幹部は「日本人客を韓国に連れてくるのが私たちの仕事だが、次から次に歴史問題が浮上し、積極的に訪韓客を増やす気持ちになれない」とやるせない顔をした。

この記事は2017年09月25日付で、内容は当時のものです。

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