まるでタイムスリップ! 古文書から見えてくる生々しい日本史

西日本新聞

 著者の磯田道史氏はNHKの歴史番組で司会も務め、お茶の間でも知名度の高い歴史学者だ。歴史という専門性が高い分野を、視聴者にわかりやすく解説する姿勢には定評がある。

 「豊臣秀吉という人物はですね~。晩年に朝鮮出兵を行ったでしょ。あれは大陸征服という壮大な夢もあったんでしょうけど、自分の力を日本中に誇示する目的の方が大きかったと思うんですよね。なにせ前半生は不当に卑しめられてきましたから」。独特の口調で、歴史の偉人たちを近所のおじさんのように語る磯田氏。おかげで遥か高みにある偉人たちの思考パターンが、なんとなく理解できるようになる。この“解説力”は、著者の傑出した能力だ。

 それにしても、なぜ著者は何百年も前の人物たちのことをこんなにもよく理解できているのか。その答えは本書に隠されている。著者は古文書を入口にして、歴史に触れているのだ。古文書は、その当時に記録された一次情報である。どんな戦功をあげて、どんな恩賞をもらったのか。日本人の当時の身長はどれくらいだったか。そうしたことが細かく書かれている。

 本書では一般的な歴史イメージとは異なる、古文書が語る日本史の内幕を多数紹介している。「秀吉の天下統一戦と本願寺の協力」「黒田家は播磨から流浪か」「福岡藩主のミステリー」「一八四〇年豪農の豪華な旅」「龍馬が導いた西郷書状」「油酒樽に詰まった埋蔵金」「忍者子孫たちとの交流」など、気になる話題が沢山だ。当時の人が記録した一次資料で考察しているので、その生々しさは格別。まるで過去にタイムスリップした感覚を味わえる。

 一般的に歴史は、時の為政者や後世の価値観によって、評価がコロコロ変わってしまうものだ。例えば、足利尊氏は室町幕府を開いた人物だが、戦時中は時の天皇に背いた人物として評価が低かった。この他、それまでマイナー武将だった直江兼続が、大河ドラマをキッカケにして有名武将に変化した例もある。すでに過去のことなのに、一筋縄ではいかないのが歴史なのだ。

 そうしたバイアスをかけず、公平な見方を実現するには、やはり古文書から読み解くのが一番なのだろう。本書で紹介している歴史の見方や楽しみ方は、一般社会における情報の取り入れ方にも大いに参考にもなるのではなかろうか。


出版社:中央公論新社
書名:日本史の内幕
著者名 磯田道史
定価(税込):907円
税別価格:840円
リンク先:http://www.chuko.co.jp/shinsho/2017/10/102455.html

西日本新聞 読書案内編集部

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