来年度予算案 財政再建の旗印はどこへ

西日本新聞

 景気が順調な今こそ、痛みを伴う歳出改革や財政再建に歩み出すことが必要ではなかったか。

 政府が2018年度予算案を閣議決定した。

 一般会計の歳出総額は97兆7128億円と6年連続で過去最高を更新した。歳入は、税収を59兆790億円と高く見積もり、新たな借金の新規国債発行額は33兆6922億円と17年度より減額した。

 政府は「生産性革命」や「人づくり革命」など安倍晋三政権の新しい看板政策を推し進め、財政健全化への取り組みも着実に進める予算と説明している。

 ただ、安倍政権の財政運営は当初予算では財政再建路線を装いつつ、補正予算の編成で歳出を幅広く積み増す手法が常態化している。同時に閣議決定された17年度補正予算案で17年度も当初予算と合わせた歳出規模は99兆円を超す。財政規律の緩みも甚だしい。歳出抑制に真正面から取り組む時ではないか。

 ●歳出削減は進んだのか

 来年度予算編成の焦点は、社会保障費の拡大をどう抑えるか、より具体的には、6年に1度の診療報酬と介護報酬の同時改定の行方だった。

 診療報酬は、医師や薬剤師などの技術料に当たる「本体」部分を0・55%(国費ベースで588億円)引き上げる一方、医薬品など「薬価」部分を1・45%(同1555億円)引き下げることで、全体として0・9%の引き下げで決着した。介護報酬は0・54%(同137億円)引き上げた。

 結果として社会保障費は高齢化に伴う自然増を前年度比5千億円以下にとどめるという財政健全化目標はクリアした。それでも32兆9732億円と過去最大だ。

 今回の診療報酬改定では日本医師会など自民党の有力な支持団体への配慮が目立った。医療は質の維持が大切だが、歳出の改革に十分踏み込めたとは言い難い。

 社会保障は、団塊の世代が75歳以上になり、医療・介護・年金がかさむ「2025年問題」に備える抜本改革が不可欠だ。費用の膨張を抑える一方、急がれるのは医療や介護の現場をニーズに応じて再整備する改革である。

 医療と介護の切れ目のない連携▽都道府県ごとの病床数の適正化▽大病院と診療所の一層の役割分担▽情報通信機器を使った遠隔診療の促進など、できることから手を付けねばならない。同時に新たな財源措置を含め、安心できる社会保障制度の青写真づくりこそ、早急に始める必要がある。

 歳出では、防衛費も5兆1911億円と過去最大となった。ミサイル発射を繰り返す北朝鮮や、中国の海洋進出に対応するためだというが、歯止めはあるのか。聖域化せず装備の厳選、調達改革での装備品の価格低減が不可欠だ。

 「人づくり革命」関連では、待機児童解消のための保育所などの施設整備費が、「生産性革命」関連では、中小企業の事業承継支援措置の拡充などが、それぞれ盛り込まれた。差し迫った課題を解決する政策として歓迎したい。

 とはいえ、「人づくり革命」は、幼児・高等教育の無償化などばらまき色も強い。今後、関連する事業を精査して実効性を厳格に見極めていくべきだろう。

 ●危機感が希薄に過ぎる

 何よりも気になるのは、高い税収見通しに加え、低金利によって国債の利払い費などが抑えられているため、歳出改革への本気度が伝わってこないことである。

 政府は既に19年10月の消費税増税の増収分のうち1兆7千億円の使途を借金減額から教育無償化などへの歳出拡大に変更した。この結果、20年度に基礎的財政収支を黒字化する目標は延期を余儀なくされている。18年度末の国と地方の長期債務残高は1108兆円に膨らむ。先進国で最悪の水準だ。巨額の借金を抱える財政への危機感が希薄としか言いようがない。

 日銀が発表した12月の企業短期経済観測調査(短観)は大企業・製造業の景況感を示す業況判断指数が、プラス25と11年ぶりの高水準となった。

 景気への配慮が比較的軽くていい今こそ、未来への投資や財政健全化に力点を置いた予算を組むべきではなかったか。先進国でも前例のない少子高齢化が進む中で、積み上がった「宿題」を先送りする余裕はないはずだ。


=2017/12/23付 西日本新聞朝刊=

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