ドイツ語のイタリア

西日本新聞

 チロルといえばアルプスと緑の高原の美しい地方だ。だが歴史的には複雑。もともと神聖ローマ帝国のチロル伯爵領だったが、ドイツ系のハプスブルク家の領地に。その後、南部では併合を目指すムソリーニがドイツ語を禁じるイタリア化計画を進める。さらにドイツ語系住民はヒトラーからドイツへ移住するか、イタリア同化を受け入れるか迫られた。

 現在はオーストリアとイタリアにまたがっている。イタリア側は南チロルと呼ばれ人口51万人余。75%がドイツ語を話し、自治が認められている。最近オーストリアに誕生した保守・極右連立政権は、南チロルのドイツ語系住民に対し、オーストリアのパスポートを与えることを提案した。「イタリアに手を出すな」「民族主義の季節は終わったぞ」と、イタリアの政治家たちは怒りの声を上げる。

 しかし住民は淡々。「私はドイツ人でもイタリア人でもオーストリア人でもなく、南チロル人です」と、ホテルの女性経営者は欧州の英字電子紙ザ・ローカルに語る。国に振り回されることにうんざりなのだろう。 (井手)


=2017/12/26付 西日本新聞夕刊=

PR

社説・コラム アクセスランキング

PR

注目のテーマ