「つがい」肥前狛犬再会へ 明大購入の「阿形」と多久市の「吽形」 持ち去り、転売?で離れ離れ

西日本新聞

 神社仏閣の入り口左右に鎮座し、独特の愛らしさで石造物ファンの人気を集める佐賀県の「肥前狛犬(こまいぬ)」。心ない人に勝手に持ち去られ、市場に売られて海外に渡るケースも起きている。そんな中、明治大が購入した1体と同県多久市郷土資料館が収蔵する1体が、つがいの阿吽(あうん)である可能性が高いとして話題になっている。離れ離れの2体は来年にも、“生まれ故郷”の佐賀で対面するという。

 きっかけは、佐賀市で今年3月に開かれた愛好会「肥前狛犬を学ぶ会」の見学会。中国南部の石獅爺(せきしや)などアジア地域の霊獣像に詳しい明治大大学院の川野明正教授(50)=中国民俗学=が参加した際、多久市の会員永渕秀治さん(69)から「佐賀県小城市内の店に肥前狛犬が1体売られていた」という話を聞いた。

 早速訪ねると、狛犬は店内の片隅にひっそりと置かれていた。像高38・3センチ、前脚幅18・5センチ。安山岩製で胸部が張り出し、口を少し開いた阿形(あぎょう)像だった。川野教授は遺失を防ぐためにも教材として活用することに決め、4月に研究費で購入した。

 相方の吽形(うんぎょう)像を探そうと、自ら撮りためた狛犬約200体の画像を調べたところ、そっくりなものが見つかった。福岡市の夫婦が昨年11月、多久市郷土資料館へ寄贈した1体。夫婦が十数年前、佐賀市の古物商から購入したものだった。

 「肥前狛犬はいずれも造形が個性的なので、違いがよく分かる。つがいであるのは間違いない。17世紀ごろの制作だろう」と川野教授。来年2月に多久市で予定される学ぶ会の例会で引き合わせるという。

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 肥前狛犬は屋外に置かれたものが多く、小型で持ち運びも容易なことから盗難被害が相次いでいる。永渕さんは「インターネットや店で売買されている肥前狛犬の大半が元々は盗品だ」。1体数万~数十万円で売られているとされる。

 昨年6月、盗難に遭った肥前狛犬が米ニューヨークのギャラリーで売られていることが分かり、佐賀署に返還されて話題になった。小城市で盗まれ、転売の末に太平洋を渡ったとみられる。戻った狛犬は永渕さんが有償で譲り受け、制作地の小城市へ寄贈した。

 永渕さんによると、この5年間で所在を確認した肥前狛犬は佐賀、福岡、長崎3県で計581体(264カ所)。このうち少なくとも6体が盗まれたという。

 学ぶ会はパトロールを兼ねた見学会を年4回、各地で実施。同会事務局長で、多久市郷土資料館前館長の西村隆司さん(70)は「六地蔵塔や狛犬といった石造物は、寄進した人々によってあがめられてきた。鑑賞したい人はその場所に足を運ぶべきで、個人所有は本来の姿ではない」と話している。

【ワードBOX】肥前狛犬

 16世紀末から18世紀前半にかけて、佐賀県小城市牛津町砥川(とがわ)地区の石工集団によって主に地元産出の安山岩で制作された。江戸中期以降に一般化する唐獅子型狛犬と比べて小柄で、四肢と胴部の間をくりぬかないなど、デフォルメされた体つきとユーモラスな顔立ちに特徴がある。分布範囲は佐賀を中心に福岡、長崎、熊本各県の一部に及ぶ。

=2017/12/26付 西日本新聞夕刊=

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