イシグロ氏が故郷に手紙 「長崎は常に私の一部」 ノーベル賞祝福の返礼

西日本新聞

 ノーベル文学賞を受賞した長崎市生まれの英国人作家、カズオ・イシグロ氏の直筆署名入りの手紙が11月下旬、中村法道長崎県知事と、田上富久長崎市長宛てにそれぞれ届いていたことが分かった。受賞決定後に送った祝福の手紙への返信。「Nagasaki」への特別な気持ちが英文でタイプされ、最後にサインがしたためられた。県と市はそれぞれ栄誉を顕彰する方向で検討している。

 「『長崎』と聞くだけでいまだに特別な気持ちに包まれます」

 田上氏への文面で、こうつづったイシグロ氏。5歳まで過ごした長崎での記憶が自身の執筆の基礎になっていることを、授賞式前のスウェーデンでの記念講演で話したい、と記した。

 実際、今月7日の現地での講演では、原爆から復興する長崎が舞台の初の長編小説「遠い山なみの光」を執筆した背景について「記憶の中の私の日本が消えてしまう前に書き留めようとした」と表現。作家として生きることを決定づける作品となったことを打ち明けている。

 さらに手紙では「記憶の中の日本とは長崎のことで、(日本で)長崎以外は知りません」とし「長崎の代表からの手紙に心を打たれ、ただただ感謝し、大きな賞を市民の皆さまにも喜んでいただけたことをうれしく思います」と伝えている。中村氏への文面でも「これからも、長崎は常に私の一部であり続けます」と記した。

 田上氏は、イシグロ氏に宛てた10月10日付の手紙で、イシグロ氏に賛辞を贈るとともに「受賞によって長崎市に関心を持ち、訪れたいと思う人々も出てくるでしょう。そして、そのような皆さんが平和について考える機会も増えることでしょう。このことは長崎市長としてとても喜ばしいことです」と記していた。

 長崎市出身の芥川賞作家、青来有一さんは「丁寧な内容で同郷の作家としてうれしい。受賞を喜ぶ長崎の反応や手紙を通して、あらためて長崎や平和への思いを深め、記念のスピーチに影響を与えたのかもしれない」と推測した。手紙を県は額に入れて知事室に、市は金庫に保管している。

=2017/12/27付 西日本新聞朝刊=

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