福岡の老舗パン店が閉店へ 創業67年、大みそかがラスト

西日本新聞

 福岡市東区の西鉄香椎花園前駅そばにあるパン店「MAMBO フランスパンヤ」(東区香住ケ丘6丁目)が31日、閉店する。創業67年の個人経営店の店じまいを知り、昔ながらの素朴な味を惜しむ地域住民や、かつての常連客らが連日詰め掛け、大盛況だ。店主の満保(まんぼ)和信さん(66)は「大みそかまで予約もいっぱいで大忙し。ありがたい」と喜び、親子2代で続けてきた、最後のパン作りに励んでいる。

 創業は戦後間もない1950年。父の清信さん(享年76)が東区箱崎で開店した。周辺にまだ山林が広がっていた70年、現在の場所に移転し、精肉店や鮮魚店、青果店など50店と軒を連ねた。当時は電車の待ち時間に買い物をする沿線の住民たちでにぎわったが、西鉄の一部廃線や大型店の進出で多くの店が姿を消し、客足は遠のいた。

 満保さんが出版関係の会社を辞めて家業を継いだのは22歳の時。父親の姿を見よう見まねで学び、40年余りほぼ毎日、午前3時からパンを作り続けてきた。「座って食事ができるのは仕事が一段落した午後2時。11時間立ち続けるのが体力的に厳しくなった」ことから店じまいを決めた。

 今月上旬、店頭に閉店を知らせる張り紙を出すと、常連客の一人が会員制交流サイト(SNS)で発信。かつてのなじみ客が、引っ越し先の市内外からひっきりなしに訪れるようになった。店内は孫を連れた高齢者らであふれ、妻の百合江さん(62)と互いに感謝の気持ちを伝え合う。

 店内には、ロングセラーの練乳入りの小さなフランスパンや、卵が味わい深いサンドイッチなど、満保さんが大切にしてきた「飽きのこない素朴な味わい」のパンが並ぶ。近くの大野雅江さん(80)は「全部、おいしいのよ。40年以上通っているので、本当に寂しい」と漏らした。

 恒例の正月用の豪華食パンなど、例年以上の予約を受け、満保さんは27日夕、急きょ、取引先に材料を取りに行った。「思わぬ誤算で大変だけど、最後まで頑張りたい」。使い込まれた父の遺品の製パン器具とともに、特別な年の瀬を駆け抜ける。

=2017/12/28付 西日本新聞夕刊=

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