「食材の宝島」付加価値に パン店「パンプラス」経営

西日本新聞

 壱岐市郷ノ浦町に昨年4月オープンしたパン店「パンプラス」。60~70種類のパンがあり、壱岐牛を使ったカレーパンや味わい深い塩パンが人気だ。

 店主の大久保卓哉さん(29)は福岡県春日市出身。開業を前に、妻と4人の子どもと一緒に春日から壱岐へ移住した。大学を出て、地元の製パン会社の直営8店舗で店長を経験し、パン作り、販売・経営を学んだ。父親の故郷の壱岐には幼いころから2年に1度ほど訪れていた。「独立し、大勢の家族と過ごす環境を考えたとき、壱岐で1人暮らしだった祖父の持つ土地での開業と同居を思い立った」

 好評を得ている壱岐牛を使ったカレーパンだが、実は福岡時代は壱岐牛を知らなかった。島に住んで素晴らしい食材に出合い、「もっとPRしたい」と1年前、約1カ月がかりで商品化にこぎ着けた。昨年12月、東京であった県の物産展で試験販売したところ好評で、6月に全国の話題のグルメが集結する都内のイベントに挑んだ。1日で1600個を販売した。

 バイヤーからの問い合わせが相次ぎ、東京、大阪、名古屋、千葉、青森の百貨店などで出張販売も重ねた。販路は広がり、事業を拡大。2月に島内でさらに1店舗、10月には福岡県那珂川町に福岡店をオープンさせた。福岡店では壱岐産古代米を使った食パンも販売している。

 「壱岐は魚、肉、野菜、果物、米など何でもおいしい『食材の宝島』。壱岐牛カレーパンは壱岐だからこそ生まれた。壱岐産は付加価値になる」。壱岐牛を使ったハンバーガーやメンチカツサンドの商品化にも動いている。

 来年1月には5人目の子どもが生まれる予定。多くの人に自慢のパンを食べてもらえるよう、島内外へのさらなる出店を目指す思いもより強くなった。スタッフ4人と始めた店は、福岡を含め13人を雇うまでになっている。「島で生まれ育った子どもたち、若者が将来に希望を持てる島になるよう、パンプラスが雇用の受け皿になれるぐらい頑張りたいたいですね」。その野心は、島を大いに刺激する。

通信部から

 本紙の壱岐通信部の記者公募に手を挙げ、山口県からIターンして6年目。医療態勢などへの不安はあるが、楽しく暮らしている。

 私のような移住を身近に感じてもらおうと、壱岐市が今年3月に実施した「お試し移住体験ツアー」には22人が参加。しま暮らしのネックは働く場の確保だが、ツアーを経て移住したのは市役所勤務の「地域おこし協力隊員」に選ばれた、うち2人の家族だった。

 当面の仕事場を得たことが離島で暮らす決断を促した側面はあるだろう。元隊員の4人は定住してゲストハウスを開業したり、農業生産法人を設立したりと、最長3年の任期後も島で活躍している実績もある。移住をどう後押ししていくか。知恵の絞りどころだ。

=2017/12/23付 西日本新聞朝刊=

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