「核廃絶」へ何ができるか

西日本新聞

 出身地の広島市に戻るたびに行く場所がある。平和記念公園の原爆死没者慰霊碑の前で手を合わせる。

 「安らかに眠って下(くだ)さい。過ちは繰り返しませぬから」‐碑文は広島大の雑賀忠義(さいかただよし)教授が起草した。主語がないとの批判も浴びたが、人類の決意としてはしっくりくる。

 広島の惨禍から7年後の1952年8月6日に建立された。それから66年たっても人類は核兵器という過ちを廃絶できないでいる。

 それどころかストックホルム国際平和研究所によると、ロシア、米国、フランス、中国、英国、パキスタン、インド、イスラエル、北朝鮮の9カ国に計1万5千発近い核弾頭があるという。

 しかし絶望はしたくない。昨年は核兵器廃絶に向けて大きな動きがあった。核兵器の開発、実験、製造、備蓄、移譲、使用に加え、威嚇としての使用も禁じる核兵器禁止条約が122カ国・地域が賛成して国連で採択された。

 尽力した国際非政府組織(NGO)の核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)はノーベル平和賞に輝いた。

 にもかかわらず核保有国と「核の傘」を頼る国々は、国際世論に背を向けたままだ。残念ながら日本政府も核禁条約の採択に参加しなかった。

 政府は「核兵器廃絶へのアプローチが違う」と弁明するが、日本が主導する核兵器廃絶決議の賛成国が昨年減ったことをみても「唯一の戦争被爆国」の姿勢が問われているのは間違いない。核保有国は一見対立するように見えて、核兵器を持たない国や市民社会を核戦争の恐怖でどう喝する本質は変わらない。

 日本の高校生平和大使によるジュネーブ軍縮会議での演説まで中国が圧力をかけていたことが昨年、明らかになった。核兵器廃絶を求める国際世論の高まりに対する核保有国の焦りともいえよう。

 核保有国の築く壁が厚く高いのは承知の上で、昨年の動きを2018年につなげたい。私には何ができるのか。新しい年もまた考え続けていきたい。


=2018/01/08付 西日本新聞朝刊=

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