江原道(韓国) 「圏外」で癒やされる

西日本新聞

 韓国・仁川空港から車で約2時間。2月に冬季五輪を控える平昌近くの江原道洪川の山中に、疲れた人々の心と体を癒やすヒーリング施設がある。「ヒーリアンスソンマウル」。韓国の富裕層に人気で、さらにアジアや欧州からも広く外国人客を呼び込もうとしているという。私自身、取材で走り回り、くたくたの日々。癒やしを求め、1泊2日のヒーリングを体験した。

 約100万平方メートルの広大な敷地に入った途端、スマートフォンは「圏外」に。駐車場でバスから降り、5分も歩いていないのに疲れるほど傾斜が急な道を登り切って、施設の説明を受けた。

 開業したのは、脳神経外科のリ・シヒョン医師。現代の便利な暮らしの中では運動量が落ち、ケータイがひっきりなしに電話やメールを受信する状況では、心も体も余裕を失って病気になりやすいと考え、「生活を見直す機会を提供できないか」と10年前にオープンさせたという。

 このため、施設は意図的に不便さを追求している。「きつい坂道」も「圏外」もそのひとつ。運動不足を解消し、情報を遮断することで心にゆとりを持たせようという狙いがあるらしい。

 食事のルールは「三つの30」。30品目の食材を30回かんで30分かけてゆっくり食べるという約束で、おこわや納豆、キムチなどをいただく。普段はさっさと食事を済ませることが多いだけに、どうしても早く飲み込みたくなるが、我慢。いつもより満腹感を得られた気がした。

 夕食を済ませると、モンゴル遊牧民の移動式住居ゲルをモチーフにした一室で、「香りの授業」を受けた。まずは部屋に漂う杉の香りを吸ってリラックス。次に、心の乱れを落ち着かせる効果があるという木のアロマ「フランキンセンス」が数滴入った白湯を飲む。食用のアロマで、口に含むとやわらかい香りが広がった。

 心を整えた後は体の癒やし。ペパーミントのアロマを手に取って肩や首、腕につけ、「ポン」という器具を使い、自分でごりごりと体をマッサージ。受講者同士で首筋にポンを押し当てると、あまりの気持ち良さに、体から力が抜けていった。

 心身の緊張をほぐしたら、瞑想(めいそう)の時間。雑音のない部屋に、授業担当者の優しい声が響く。「いつも頑張る自分にありがとうと伝えて」「心の形は言葉で変わる。あなたは自分や他者に、いつもどんな言葉をかけていますか」。穏やかに流れる時間の中で、普段の自分を見つめ直した。

 瞑想を終えると、暗くなった屋外に出て米国先住民式のキャンプファイア「キバ」を体験。「心が最も安らぐ」という木の燃える音を聞きながら、現地文化に倣い、出来たての焼き芋を参加者で分け合って食べた。こうして仲間とコミュニケーションを取り、炎の遠赤外線を浴びることで、心身が安らいで快眠につながるという。肌を突き刺すような冬山の寒さの中、心と体を温めて1日が終わった。

 翌朝、山道を30分ほど歩いた先にある森であおむけになり、風や木の葉のこすれる音などに耳を澄ます「森の授業」を受けて、全てのプログラムが終了。敷地外に出ると、早々にネットを使い始めた自分に苦笑したが、来たときよりも心なしか、気持ちが軽くなった気がした。

 ●メモ

 「ヒーリアンスソンマウル」の「ヒーリアンス」とは「ヒーリング」と「サイエンス」を組み合わせた造語。科学的知見に基づいた18のヒーリングプログラムを実施している。「ソンマウル」は「仙人の村」の意味。1泊2日の滞在では3~4のプログラムが受講可能で、料金は日本円で約1万7000円。日本語対応のスタッフがいないため、グループでの申し込みを推奨している。通訳の手配や予約の問い合わせは、韓国観光公社福岡支社=092(471)7174。

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 ●寄り道=伝統の韓方茶

 ソウル江南区にある「Tea Therapy」(ティーセラピー)では、伝統の「韓方茶」を継承しようと、若者が気軽に入れる洋風の明るいカフェスタイルでお茶を提供している。カフェの一角では、各種の韓方茶の美容、健康効果を学びながら試飲もできる=写真。日本語の上手な先生もおり、和やかな雰囲気で自分の体に合ったお茶を教えてくれる。


=2018/01/10付 西日本新聞夕刊=

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