老舗料亭「山水園」閉店へ 後継者なし、70年の歴史に幕 関門海峡一望、惜しむ客相次ぐ

西日本新聞 北九州版

 関門海峡を一望できる高台に立つ料亭「山水園」(門司区広石2丁目)が31日、約70年の歴史に幕を下ろす。九州の玄関口・門司港に近く、政財界や芸能界からも多くの客を迎えてきた老舗は後継者がなく、店を閉じる。「景色もごちそうの一つ」と眺望も人気の山水園。店との別れを惜しむ常連客らが絶えない。

 女将(おかみ)の稲益久恵さん(68)によると、山水園の建物は1939(昭和14)年、同区で呉服商を営んでいた稲益家の別邸として建てられた。47年、料亭を開業。2階建てで、1階に洋室2部屋、2階に和室3部屋を備える。稲益さんは77年に嫁いで以来、店で働き、89年に女将となった。

 港町として栄えた門司港に近く、多くの有名人が訪れた。門司で石油販売業を興した出光佐三と、俳優の市川右太衛門(俳優北大路欣也さんの父)は色紙、写真を残した。俳優の片岡鶴太郎さんや加山雄三さんが食事に訪れたこともある。「一つの座敷が一晩で3回転したこともあったそうです」と稲益さん。

 バブル崩壊後は客足が鈍り始めたが、門司港ならではの眺望の人気は不動で、「東京や大阪のお客さんをもてなすのは山水園しかない」と、地元企業の社長や医者など常連客が使い続けてくれた。女将になった稲益さんは昼の営業も開始。最近は女性グループの来店も増えたという。

 店の板場を担当していた夫が2009年に死去、2人の娘も他家に嫁いだ。閉店を考えるようになったのは2~3年前。昨年9月末、なじみ客約500人に閉店のあいさつ状を出した。店を閉めることに寂しさも感じるというが、稲益さんは「休みなく働いてきた。出会いに感謝しながら、新しい人生を楽しめたら」と話している。

=2018/01/13付 西日本新聞朝刊=

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