IT駆使、在宅医療充実へ 鹿島市の織田病院 患者とテレビ電話、多職種協働も

西日本新聞

 医療・介護の垣根を取り払い、遠隔診療でも先進的な取り組みを進め、注目を集めている病院が鹿島市にある。祐愛会織田病院。ITを駆使して在宅医療の可能性を探る試みは、目新しさを狙ったものではない。急増する85歳以上の高齢者を医療機関や介護施設で受け入れることが不可能になる時代を見越しての挑戦だった。

 「毎朝、看護師さんと顔を見ながら会話ができるので安心感がある」。こう話すのは、自宅で難病を患う男性(78)を介護している妻(77)だ。男性が横たわるベッドの端にはタブレット端末が設置され、テレビ電話の要領で病院の看護師とやりとりができる。

 この日は、理学療法士が男性の体をほぐしていた。病院系列の介護スタッフも交代で訪れる。全員がタブレット端末を持ち、いつでもどこでもカルテや介護記録を閲覧できる。訪問看護ステーションの小森ヒロ子所長は「その場で入力することも可能。情報共有の質量とも格段にアップした」と利点を強調する。

 こうした仕組みは、同病院がインターネット上にデータを保管、共有するクラウドに電子カルテを保存するシステムを12年に導入したことで実現した。織田正道理事長(65)は「職種で閲覧できる範囲を制限している上、端末には情報を保存していないので安全性も確保されている」と説明する。

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 院内に、通路側がガラス張りで間仕切りがない約100平方メートルの部屋がある。医療と介護の垣根をなくした「メディカルベースキャンプ(MBC)」だ。

 ヘルパーやケアマネジャーなど介護職も交え、朝のミーティングが開かれていた。室内の80インチのモニターには在宅看護対象者の自宅が地図上に映し出され、看護師を乗せた車の位置も5分ごとに更新される。ソフトウエア会社「オプティム」(本店・佐賀市)とシステムの改良を進めており、お薬カレンダーをチェックしたり、テレビがつかないと患者に異常があったと判断し、警告したりする機能も追加される。

 同病院の16年度のベッド稼働率は99・6%で、新規入院患者数は3207人に上る。111床という病床数で、救急搬送者を含め、より多くの患者を受け入れるためには在院日数を減らすしかない。早期退院してもらうには在宅での看護・介護を充実させる必要がある。高齢の患者はリハビリを休んでしまうと寝たきりになり、再入院となることも多い。MBCではITも駆使して多職種の協働を進め、「自宅で安心して病後を送れる環境」を支えようとしている。

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 同病院がこうした取り組みに力を入れるのは「85歳以上の高齢者が急増し、施設での医療・介護が困難になる」と予測しているためだ。後期高齢者(75歳以上)の中でも85歳以上は認知症や運動器障害を併せ持つ要介護者が4割を超える。鹿島市など3市4町では12年に後期高齢者のうち85歳以上が75~84歳を上回り、35年には1万3千人を超えると予想されている。

 実際に16年度の85歳以上の入院患者は816人で、10年前の2・7倍。団塊の世代(第1次ベビーブーム世代)が85歳以上を迎える15年後、都市部でも医療・介護がパンクする可能性がある。同病院は医師の手順書により一定の診療補助(特定行為)ができる看護師の研修を県内で初めて始めたが、在宅医療の充実を図る狙いがある。

 「鹿島から新たな在宅医療・介護のモデルを発信したい」。織田理事長は意欲を燃やしている。

=2018/01/18付 西日本新聞朝刊=

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