売れっ子CM演出家が長編映画に挑戦 森ガキ侑大監督「おじいちゃん、死んじゃったって。」

西日本新聞

肉親の死と家族のありよう描く

 監督名を「森ガキ」と名乗り、映画冒頭の性描写はベッドを縦位置にした構図で映し出す。CM業界で売れっ子演出家の森ガキ侑大(ゆきひろ)監督(34)は、奇をてらうのが好きそうだが、初の長編映画「おじいちゃん、死んじゃったって。」(福岡市の中洲大洋などで公開中)は祖父の死を巡る家族の在りようという身近なテーマを扱った。

  恋人と愛し合っている最中に祖父の死の連絡を受けた吉子(岸井ゆきの)は後ろめたさを感じる。吉子の父親(光石研)は残された認知症の母親をどこの施設に預けるか心配し、伯父(岩松了)は実務的な手続きを進める弟に憤慨する。CMの世界で鍛えられた短時間で人の心をつかむような技が利き、どこでもありそうな家族の風景をコミカルに温かく描いた。

 このところ小説や漫画の映画化が多いが、森ガキ監督は「長編デビューは絶対オリジナルでやる」と決め、今回の脚本を読み、映画化に乗り出した。死をなかなか受け入れられない主人公に対し、現実の雑事をこなす親世代。監督は「家族や生と死を描き、どの世代も身近に感じられるものにしたかった」と振り返る。

 キャストでは岩松、光石の九州出身コンビに、フェラーリを乗り回す格好いい妹役の水野美紀が加わった3きょうだいを物語の軸に据えた。「3人のアンサンブルは不可欠だった。光石さんと岩松さんのマネジャーが偶然同じで、2人が兄弟とは面白いと快諾され、これで行けると思った」

 ロケ地は「東京から遠く離れた、コンビニが目立たない緑豊かな町」のイメージにぴったりと熊本県人吉市に。決めたのは熊本地震の直前だったが、震災後、地元から「企画は続行してほしい」と熱望された。

 広島市出身。地元の大学を卒業後、「福岡は面白い広告が多い」と福岡市の制作会社に3年半ほど在籍した。「深夜2時まで仕事してそれから頼まれてもいない企画書を書き続けた」。26歳で上京。2012年にACCシルバー(銀賞)を受賞し、今や資生堂やソフトバンクなどのCMを手掛ける。「予定調和にはしない」が信条。監督名の「ガキ」も「60歳になっても少年の心を忘れないように付けた」と、意外にも真っすぐな理由だった。

=2018/01/19付 西日本新聞夕刊(娯楽面)=

PR

文化 アクセスランキング

PR

注目のテーマ