生活保護減額 「最低限」を支えられるか

西日本新聞

 生活保護の柱である「生活扶助」が来年度から、3年かけて段階的に見直される。単身高齢者世帯などで最大5%の引き下げとなる。その結果、受給世帯の実に3分の2が減額になるという。

 食費や光熱費に充当される生活扶助の見直しは、5年に1度実施される。前回も平均6・5%減額されており、「生活を維持できるのか」と不安が広がるのは当然だ。格差や貧困の解消を掲げる安倍晋三政権の姿勢も問われよう。

 生活扶助の改定は、国の全国消費実態調査を基に実施される。一般低所得者層の生活費との均衡を勘案して支給額の水準を決める。

 税金を投じる生活保護世帯を低所得世帯より優遇しない-。一見合理的に思えるが、社会保障の専門家の間では、以前から批判が多い算出手法である。

 「周囲の目が気になる」などの理由で、生活保護が必要な人の約2割しか受給していないという指摘がある。無理を重ねて生活費を切り詰めがちな低所得者層の水準に合わせれば、支給費は際限なく引き下げられかねない。

 不況などで消費水準が低下した場合、それに応じて支給額も減らせば、最低限度の生活さえおぼつかなくなる恐れがある。

 生活保護は、憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する制度である。住民税非課税の線引きや就学援助など、生活保護と連動する制度も数多い。引き下げは慎重に検討すべきだ。

 生活保護を受ける世帯は約164万に上り、20年間で約2・7倍に増えた。国と地方を合わせた予算は約3兆8千億円に上る。

 高齢世帯の受給が多く、今後も増えることが予想される。とはいえ、政府が「支給総額抑制ありき」という姿勢では、「最後のセーフティーネット(安全網)」の役割を果たすことすら危うくなる。

 「最低限度の生活」とは何か。そのために必要な保護の水準をどう設定するのか。就労支援強化などで受給者を減らす取り組みと並行して、制度の原点を踏まえた議論を政府に求めたい。


=2018/01/22付 西日本新聞朝刊=

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