藻場とウニ漁ともに守る ムラサキウニ駆除せず移植 海士、県研究機関がタッグ

西日本新聞

 唐津湾に浮かぶ唐津市の離島・神集(かしわ)島で、藻場を枯らす原因となるムラサキウニを別の海域へ移し替える取り組みが進んでいる。磯焼けのひどい藻場のムラサキウニは実入りが悪く、これまでは駆除対象だったが、移植することで実入りが改善することも分かってきた。藻場の再生とウニの実入り改善という“一挙両得”を目指す県の研究機関「玄海水産振興センター」(同市)と島の海士の活動を追った。

 昨年11月、神集島の沖合約50メートル。酸素ボンベを背負った海士(あま)が海上に顔を出した。深さ約5メートルの海底から採取したムラサキウニを船上に引き上げ、波打ち際の浅瀬に運んで放流した。その数およそ5千個(約400キロ)。海士11人が1日かけて本年度分の作業を終えた。

 コンブやホンダワラなどの海藻が茂り、魚のすみかとなる藻場は、水中の有機物を分解するとともに二酸化炭素(CO2)を吸収し、酸素を作り出す「海のゆりかご」だ。県内の玄界灘沿岸では、1977年ごろは約1800ヘクタールあったが、92年ごろには約1200ヘクタールにまで減った。危機感を抱いた関係者が保全に励み、その後は横ばい状態が続く。

 玄海水産振興センターは2011年度から小川島など玄界灘沿岸で、食用ではないウニの一種ガンガゼとともにムラサキウニの駆除試験に着手。ともに繁殖力が強く、藻場の規模に比べて増え過ぎたためだ。駆除することで藻場が再生することも分かり、12の漁業者グループと共同で駆除に取り組むようになった。

 神集島でも藻場が消え、漁獲が減る磯焼け被害が出ていた。一方で、ムラサキウニは重要な収入源でもある。14年に島の海士十数人で話し合った結果、「ウニを船に上げて移動させたら」と話がまとまり、センターに提案した。

 通常のウニ漁では禁じられている酸素ボンベの着用の許可を得て、一度に大量の移植が可能になった。15年の漁期直後の6月、海士9人が2日間で約3万6千個(約1800キロ)を移し替えた。

 翌16年春、センターが移植の前後でウニの実入りを調べたところ、痩せて商品価値がなかったウニが、出荷できる水準まで改善。センターの推計で約240万円の収入増が見込めた。

 移植は6月に行っていたが、本年度は11月に実施。移植したウニの一部に標識も付けた。今季の漁が終わる6月に実入りの改善を詳細に確認する予定だ。センターの担当者、伊藤毅史さん(29)は「藻場が生物を養う許容量を調べ、磯の資源を効率的に守っていく手助けをしたい」と話す。

 海士2代目の岩本一孝さん(55)は「労力もかかるけれど実績も出てきている。継続して、若い海士のためにも豊かな海を残したい」と意気込む。

=2018/01/25付 西日本新聞朝刊=

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