揺れる竹田市の救急医療 医師会病院で「拒否」増 「適正な受け入れ水準に戻した」

西日本新聞

元院長の懲戒解雇を巡って揺れている竹田医師会病院。処分の妥当性は法廷で争われる 拡大

元院長の懲戒解雇を巡って揺れている竹田医師会病院。処分の妥当性は法廷で争われる

 竹田市医師会が運営する竹田医師会病院(同市)で、元院長の懲戒解雇に端を発し、混迷が続いている。元院長が不在となった2017年12月に救急拒否の件数が増加。市民からの不安の声を受けて、市は病院に救急医療体制の確保を要請した。一方、病院側は「今までが無理をして受け入れており、適正な水準に戻しただけだ」と主張する。竹田市は県内でもとりわけ高齢化が進む自治体だけに、地域医療の危うさも見え隠れする。

 元院長は石井一誠氏(42)。関係者によると、医師会は「看護師へのパワハラや患者情報の漏えいなど、コンプライアンス(法令順守)違反があった」として昨年12月1日から自宅待機とし、同22日付で懲戒解雇にした。石井氏は「事実誤認で不当解雇」と大分地裁竹田支部に地位保全の仮処分を申し立てている。

 病院は内科、外科、整形外科、小児科、リハビリテーション科を掲げ、ベッド数は156ある総合病院。石井氏が16年1月に院長に就任し、同4月に2次救急病院の指定を受けた。竹田市の2次救急指定病院は他に大久保病院(同市久住町)があるが、市中心部からは約11キロ離れている。同市は救急患者の受け入れ数に応じて補助金を出しており、補助金額(16年度)は医師会病院が1660万円で、大久保病院は1400万円だった。

■院長解雇が影響か

 竹田市消防本部などによると、16年4月以降の医師会病院の救急受け入れは、ほぼ100%。毎月の拒否件数は0~2件だった。しかし17年12月は「専門外」「他の患者対応のため」などの理由で23件を断った。受け入れ要請の約3割に当たる。

 医師会側は「医療体制に変化はなく、救急治療も変わらず行う。拒否件数については、そもそもマンパワーが足りておらず、専門外の措置も行って医療過誤の可能性もあったので、適切に受けられる範囲に切り替えただけ」と説明する。24日には市役所を訪れ、非公開で同様の説明をしたという。

 同本部によると、現段階で拒否に伴う深刻な影響はない。ただ、市民からは「救急病院として今後、大丈夫なのか」「救急をやめるのではないか」といった懸念が出ている。「石井氏がいなくなった影響ではないか」という指摘もある。

■熊本県からも関心

 こうした事態について、ある医療関係者は「専門外でも応急処置などできることはある。点滴のルート確保だけでも全然違う」と指摘する。病院関係者の1人は「医師会病院が拒否すれば、場合によっては大分市まで運ばなければならない。けがや病気への対応が地域で完結できなくなり、住民に申し訳ない」と声を潜める。

 竹田市の高齢化率は44・29%(17年3月末現在)で県内では姫島村に次ぐ高さ。住民の男性(70)は「みんな医師会病院を救急病院として頼っている。税金が入っているなら、地域医療を充実させる責任を果たすために行政も対策を練るべきだ」と話した。

 県境を越えた熊本県阿蘇地域でも関心を呼ぶ。同地域は16年4月の熊本地震で熊本市内への交通アクセスが悪くなり、医師会病院と冬季の救急について協力態勢を構築しているためだ。阿蘇地域の医師会や消防の関係者は「今のところ影響はない」としつつも「推移を見守りたい」と状況を注視している。

■市は医師確保要請

 「ドクターヘリやDMAT(災害派遣医療チーム)の出動などで石井院長が果たしてきた役割は大きい。その院長がいなくなると、市民の不安は計り知れないものがある」。同市の首藤勝次市長は、17年12月27日付の自身のブログに書いた。市は18年1月9日付で医師会病院に提出した要請書で石井氏の解雇に伴い医師数が減ったことから、2次救急病院として体制を堅持できるよう速やかな医師の確保に加え、市民の不安の払拭(ふっしょく)などを求めた。

 県医療政策課は「患者の行き場がなくなるような状況ではないと認識しているが、救急態勢の維持に向け、いま一度、関係病院や機関で意思疎通を図りたい」としている。高齢化は進み、社会保障費が膨らむ中、医師の不足や偏在、過重労働の問題も指摘されている昨今。医療サービスの受け手である市民も含め、あらためて地域医療を考えることが求められている。

=2018/01/25付 西日本新聞朝刊=

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