「殺生河原」という恐ろしげな名の場所が、群馬県・草津白根山の麓にある…

西日本新聞

 「殺生河原」という恐ろしげな名の場所が、群馬県・草津白根山の麓にある。草木も生えない、ごつごつとした岩場から有毒の硫化水素を含んだ蒸気が絶えず噴き出している。近づけば独特の硫黄臭が鼻を突く

▼迷い込んだ生き物は、たちまち命を奪われることから、古人は火山への畏敬と警戒の念を込めて「殺生」の名を付けたのだろう。そこから程近い本白根山の鏡池付近で噴火が起きた

▼立ち上る黒煙の中から噴石がスキー場に降り注いだ。建物の屋根や窓ガラスを突き破るほどの破壊力。スキー客や訓練中の自衛隊員らが巻き込まれた。1人が命を奪われ、11人が重軽傷を負った

▼三つの山からなる草津白根山は全国に111ある活火山の一つ。ただ、気象庁などの警戒の目は、火山活動が続いている白根山の方に向けられていた。有史以来、大きな噴火の記録がないとされる本白根山は、噴火の可能性は極めて低いとみられ、監視カメラも設置されていなかった

▼4年前の御嶽山(長野、岐阜県境)噴火を思い出す。噴火警戒レベルは最低の1だった。登山者は不意を突かれ、逃げ遅れた58人が犠牲になった。草津白根山でも昨年、火山活動が落ち着いたとして噴火警戒レベルを2から1に引き下げていた

▼時に自然は科学の裏をかくように牙をむく。阿蘇や桜島、雲仙・普賢岳など、火山と共に生きる九州である。畏敬と警戒を片時も忘れずにいたい。


=2018/01/26付 西日本新聞朝刊=

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