五輪と朝鮮半島 「宴の後」の戦略はあるか

西日本新聞

 「平和五輪」のスローガンはいいが、それが北朝鮮の戦略に利用されてはいないだろうか。懸念は強まるばかりだ。

 平昌冬季五輪の開幕(2月9日)まで2週間。北朝鮮の参加が決まったことから、韓国の文在寅大統領はこの五輪を「平和五輪」と位置付け、北朝鮮の核・ミサイル開発で危機感が強まる朝鮮半島の緊張緩和につなげようと懸命だ。

 しかしこれまでのところ、北朝鮮は核・ミサイル開発の放棄はもちろん、中断をにおわす動きさえ見せていない。文大統領の意欲だけが先行している状況である。

 北朝鮮は五輪参加を巡る今月上旬の南北協議で、韓国側が「非核化のための対話」を呼び掛けたのに対し強く反発した。五輪開幕前日の2月8日に大規模な軍事パレードを行う兆候さえある。

 北朝鮮が五輪直前になって、何らかの理屈を付けて参加取りやめを言い出す可能性も捨てきれない。その場合、参加の条件として、韓国側に南北経済協力活動の再開や米韓合同軍事演習の中止といった過大な要求を突き付けてくるのではないか。「平和五輪の成功」をいわば人質に取る構図だ。

 そこで焦った文政権が要求に応じるようでは困る。五輪成功も大事だが、北朝鮮の核放棄は比較にならないほど重要だ。核を巡る交渉につながらない限り、制裁の包囲網を緩めてはならない。「参加しなくてもいい」ぐらいの腹の据わった姿勢が求められる。

 もう一つ韓国に必要とされるのは、五輪後の戦略だ。韓国世論は北朝鮮の参加に賛否両論あるが、大会が始まれば、それなりに融和ムードが盛り上がるだろう。

 文政権の想定する今後の行程表は、五輪を機に南北で信頼感を醸成し、それを足場に核を巡る米朝対話につなげることだとみられる。だが、北朝鮮が核協議に乗ってくる可能性は今のところ低い。

 大会後に朝鮮半島で再び緊張が高まるようでは「平和五輪」の効果も水の泡となる。「宴(うたげ)の後」のシナリオをどう描くか。韓国政府の確かな戦略が求められている。


=2018/01/27付 西日本新聞朝刊=

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