基地と中傷、沖縄二重苦 米軍機落下物 「自作自演」「うそつき」電話・メール殺到 保育園「あまりに無理解」

西日本新聞

米軍ヘリの部品と同一の落下物が見つかったトタン屋根を指さす緑ケ丘保育園の神谷武宏園長。左奥が園庭=25日、沖縄県宜野湾市 拡大

米軍ヘリの部品と同一の落下物が見つかったトタン屋根を指さす緑ケ丘保育園の神谷武宏園長。左奥が園庭=25日、沖縄県宜野湾市

安田浩一さん

 昨年12月に米軍ヘリの部品と同一の落下物が見つかった沖縄県宜野湾市の「緑ケ丘保育園」に対し、「自作自演だろう」などと誹謗(ひぼう)中傷する電話やメールが相次ぎ、関係者が心を痛めている。今も米軍機は園周辺の上空を飛行し、県内では不時着などのトラブルも相次ぐ。神谷武宏園長は「米軍機と言葉の暴力によって二重に苦しめられている。私たちの境遇を正しく知ってほしい」と訴えている。

 園庭は昼間もうっすら陰っていた。落下物が見つかった後、園児の安全確保のため、神谷園長が庭全体に黒い布製ネットを張ったからだ。園児たちは昼寝の時間だったが、輸送機オスプレイ2機が園の真上を飛び、ごう音を響かせた。神谷園長は「本当に腹立たしい」と空をにらみつけた。

 同園は「世界一危険な米軍基地」とされる普天間飛行場から約300メートル、滑走路の延長線上に位置する。園長によると、昨年12月7日午前、上空で米軍ヘリが飛行していた時間帯に「ドン」という音がし、トタン屋根の上で円筒状の落下物が見つかった。

 米軍は翌日、所属機の部品であることは認めたものの、機体から落下した可能性は低いと説明。それ以降、園には「うそをつくな」「自分たちでやったんだろう」「そんなところに保育園があるのが悪い」などの電話やメールが相次いだ。

 電話は1日10件以上。業務に支障が出たため、留守番電話の設定にしたが、今年に入っても無言電話が続く。電話の多くは名乗らず、イントネーションからほとんどは県外の人だとみられるという。神谷園長は「住民の土地を奪われて基地ができた歴史や、米軍基地が沖縄に集中している現実について、あまりにも無理解だ」と憤る。

 「何でそんなことを言われないといけないのか、ショックだった」。3歳の長女を通わせる与那城千恵美さん(44)は話す。

 保護者らは互いに励まし合った。「多くの人に知ってもらわなければ、状況を変えられない」と考え、園上空の飛行禁止などを求める署名活動を続けている。多くは基地問題の活動に関わった経験がなかったが、街頭で署名を求め、ラジオに出演して「子どもたちを外で安全に遊ばせたい」と語り掛けた母親もいる。署名は県内外から6万人分以上が集まった。来月、政府に提出する予定という。

 誹謗中傷は、昨年12月13日に米軍ヘリの窓枠が運動場に落下した同市の普天間第二小学校にも向けられている。市教育委員会によると、同28日までに「学校を移転すべきだ」「基地のおかげで生活しているから、文句を言う立場じゃないだろう」などの電話が31件あった。

 市教委は「事実誤認でいわれのない非難を受けるのは大変悲しい。教職員や子どもたちを傷つける行為はやめてほしい」と話している。

弱者避難 ネットで「娯楽化」 ジャーナリスト安田浩一さん

 ここ数年、誹謗中傷がエスカレートし、露骨になっている背景にインターネットの影響があるのだろう。

 ネット上には、沖縄に限らず立場の弱い人を非難する書き込みがあふれている。弱者が権利を主張すると権威に盾突いていると見なして攻撃する風潮があり、「敵」をつくって「たたく」ことが娯楽にさえなっている。「基地の近くに住むのが悪い」との批判は明らかに歴史的事実に反するが、一部のメディアや識者は無批判に引用し、拡散している。デマは流すのは一瞬だが、否定するには相当な労力が必要だ。しかも被害者が自ら声を上げなければならず、さらなる負担を強いている。

 政治の責任も重い。機動隊員が基地反対派を「土人」となじった問題では、閣僚が「差別と断じることはできない」と擁護した。かつては沖縄に足を運び、訴えに耳を傾ける努力をした政治家が多くいたが、今はそうした姿勢が感じられない。本土に住む私たちは、沖縄に基地負担を押しつけている現状に向き合わなければならない。差別を見て見ぬふりをすることは容認することに等しい。

=2018/01/28付 西日本新聞朝刊=

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