iPS論文不正 実効性ある防止策講じよ

西日本新聞

 京都大iPS細胞研究所(山中伸弥所長)の助教(36)が、論文のデータを捏造(ねつぞう)、改ざんしていたことが発覚した。

 世界的に注目される同研究所での研究不正発覚は初めてだ。

 大学の調査に助教は「論文の見栄えを良くしたかった」と説明したという。今回の不正で人工多能性幹細胞(iPS細胞)の可能性が否定されたわけではないが、日本の研究への信頼性を傷つけたことは間違いない。ノーベル賞にも輝いた研究だけに残念だ。

 論文は、血中に含まれる薬物や有害物の脳への侵入を防ぐ機能を持つ構造体を、iPS細胞を使って体外で作ったとする内容だ。昨年2月に米科学誌に掲載された。

 京大によると、主要な図6点全てと補足図5点に数値の書き換えなどがあった。作製したとする構造体も論文通りに再現できなかった。「根幹をなす部分で有利な方向に操作されていた」という。

 論文には共著者もいた。改ざんと認定された箇所の一部を分析した共著者は助教に依頼された際、詳しい内容を知らされず試料を渡されたという。共著者も詳細を問い合わせずに分析データを返し、図の作成も助教に任せていた。

 同研究所は研究者に実験ノートの定期的な提出も求めていたが、不正を見抜けなかった。今後はチェック体制の強化や論文のデータ提出を徹底するという。実効性のある防止策を講じるべきだ。

 それにしても、なぜ同じ過ちが繰り返されるのか。小保方晴子氏のSTAP細胞問題など、生命科学分野ではこれまでも研究不正がたびたび明らかになった。

 研究者に倫理面を含めた意識改革を求めるのは当然だが、不正を生み出す背景にも目を向けたい。

 気になるのは、この助教が3月までの有期雇用だったことだ。同僚は「(論文作成を)急いでいるようだった」という。

 身分の不安定さが焦りにつながったことも考えられる。成果ばかりを求め、不正に手を染めては元も子もない。待遇改善も含めた研究環境の見直しも必要である。


=2018/02/01付 西日本新聞朝刊=

PR

社説 アクセスランキング

PR

注目のテーマ