日銀総裁人事 総括のない続投は疑問だ

西日本新聞

 安倍晋三首相にしてみれば無難な人事なのだろうが、このままでは「総括なき続投」ではないか。

 政府が、4月で任期切れとなる日本銀行の黒田東彦総裁を再任する人事案を国会に提示した。新副総裁には日銀理事の雨宮正佳氏と早稲田大教授の若田部昌澄氏を起用する人事案も提示した。

 現在の金融緩和継続を強く印象付ける人事だ。衆参両院で同意を得られれば、正式に決定する。

 2013年3月の就任から黒田氏が進めてきた異次元緩和には副作用も目立つ。その検証が不十分なままでの続投には疑問を禁じ得ない。この5年間の金融政策の成果と誤算を丁寧に国民へ説明し、日銀の新体制をスタートさせるのが筋ではないか。

 黒田氏の総裁就任以来、日本経済は海外経済の好転も手伝って、企業収益や株価、雇用などの経済指標は確かに上向いた。他方、2年程度で達成するとした2%の物価上昇目標は6度も先送りされ、今も1%程度にとどまっている。

 物価目標達成のための巨額の国債購入で日銀の国債保有残高は発行額の4割超に達し、国債市場の機能をゆがめたとされる。2年前に導入したマイナス金利は金融機関の収益を圧迫し、財政規律も緩んだ。上場投資信託(ETF)の購入で株式市場は官製相場の様相を強めたと指摘されている。

 これ以上の副作用は避けるべきだ。2%目標に拘泥せず、目標の柔軟化や政策の段階的な修正も必要ではないか。日銀は5年間の客観的な検証に基づき、今後の運営指針を率直に語ってほしい。

 目下最大の問題は、次の景気後退局面で、日銀の打つ手が少ないことだ。国債の買い入れは限界に近づき、マイナス金利の深掘りも現実的とはいえない。他方、金融緩和の恩恵に甘え、財政健全化の先送りを続ける政府の財政出動余地も限られている。

 その意味からも今後、日銀の最大の任務は、金融正常化に向けた施策を工程化し、いかに混乱なく実行していくかだろう。その道筋の説明を国民は待っている。

=2018/02/20付 西日本新聞朝刊=

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