裁量労働制 懸念解消へ見直すべきだ

西日本新聞

 一般労働者には「最長の残業時間」を質問し、裁量労働制で働く人には単なる労働時間を尋ねる。その結果、一般労働者の方が労働時間が長くなっていたという。

 これが安倍晋三首相が撤回して陳謝した国会答弁の根拠となった調査データ比較の実態だった。国民の誤解を招くずさんな比較と引用だったというほかない。

 裁量制はあらかじめ決まった時間を働いたとみなされ、勤務実態は個人の判断に任せられる。出退勤も自由意思で行える。

 政府が国会提出を予定する働き方改革関連法案には一部営業職などへの適用拡大が盛り込まれる。同制度を巡っては深夜や休日勤務以外に割増賃金が支払われず、不当な長時間労働につながるとの懸念が労働界を中心に根強い。

 不安が現実となったのが東京労働局から是正の特別指導を受けた不動産大手野村不動産(東京)の問題だ。裁量制適用社員に対象外の営業活動などをさせていた。

 裁量制には2類型ある。研究開発など法令で対象が明示されている専門業務型と、企画や調査を担う事務系の企画業務型だ。

 野村不動産では社員約1900人のうち約600人に企画型が適用されていたが、多くが対象外の営業活動を行っていた。

 企画型は対象となる業務が具体的でなく乱用される危険性があるため、導入には本人の同意を必要とするなど手続きや要件が厳格になっている。それでもこれだけの社員が対象外業務をしていた。

 業務外活動を行えば裁量制は適用できず、労働時間規制が適用されて該当社員に違法残業や残業代未払いが発生することになる。

 企業のずさんな労務管理が浮き彫りとなった形である。「裁量制導入は残業代抑制のため」との批判が出てくるのもうなずける。

 不適切データの問題を受けて、政府は適用拡大の施行時期を当初予定していた19年4月から1年遅らせる検討に入った。だが、延期するだけでは根本的な問題解決にはならない。働く人たちの視点に立って見直しを図るべきだ。

=2018/02/22付 西日本新聞朝刊=

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