最近改めて注目されている本「君たちはどう生きるか」(吉野源三郎著)を読んで
最近改めて注目されている本「君たちはどう生きるか」(吉野源三郎著)を読んで、50代のおじさん記者も己の生き方を問われた気がした。
新聞社に就職して30年。白髪は増えたが、日々に流され、目標と言えるものはない。先日の酒席では、友が語った定年後の夢にハッとさせられた。「俺は田舎に帰って、地域のお年寄りを乗せて走るコミュニティーバスの運転手をしたいんだ」。少し照れた横顔が、私にはまぶしかった。
スタジオジブリのアニメ映画「かぐや姫の物語」の主題歌を歌い、僧侶でもある二階堂和美さんの言葉も思い出す。「子どもから『うるさいおばちゃん』と呼ばれるようになりたい」。「『愛想がいいお姉ちゃん』ではなく、時にはしかり、説教もできる大人になる責任があるから」と。
季節は春へ。「君たち-」の主人公コペル君の成長ぶりにはかなわないが、多くの出会いから学んで新たな一歩を踏み出したい。 (江田一久)
=2018/02/26付 西日本新聞朝刊=