宇宙計画工程表 安全保障偏重に募る懸念

西日本新聞

 自衛隊が、米国の空軍宇宙司令部(コロラド州)主催で今秋行われる宇宙安全保障多国間演習に、初めて参加することになった。

 政府の宇宙開発戦略本部(本部長・安倍晋三首相)が昨年末に改定した宇宙基本計画の工程表に盛り込まれた。宇宙空間でも米国との防衛協力が進むことになる。

 基本計画は2008年の宇宙基本法施行に基づき、09年に初めて策定した。工程表は計画実現に向けた「アクションプラン」の位置付けで、毎年改定されている。

 16年には、従来の計画よりも安全保障や産業利用に重点を置いた最新の内容に更新し、日米の宇宙協力推進や宇宙産業の基盤強化、技術力の進展などを掲げた。

 日本の宇宙開発はこれまで、平和利用を大前提にしてきた。自衛隊の演習参加は宇宙政策の大きな転換点となる。それだけに、国民への十分な説明が欠かせない。

 自衛隊が参加するのは「シュリーバー演習」と呼ばれ、宇宙空間で自国の衛星が電波妨害や攻撃を受けた場合などを想定しての机上演習を実施する。英国やオーストラリアなども参加するという。

 工程表を決めた戦略本部の会議で安倍首相は「わが国を取り巻く安全保障の環境が厳しさを増す中で、宇宙安全保障の確保が重要となっている」と強調した。

 背景には、核やミサイル開発を進める北朝鮮、宇宙の軍事利用を拡大する中国の存在などがある。

 これに対抗する形で、15年の日米防衛協力指針(ガイドライン)改定では、宇宙・サイバー空間での脅威に対処するため協力することが明記された。自衛隊の演習参加は、これを踏まえた対応だ。

 ただ、自衛隊が参加することで近隣諸国の警戒感が強まれば、宇宙での軍拡競争につながりかねない。憲法に基づく専守防衛の自衛隊が「宇宙空間の安全保障」にどこまで踏み込めるのか。もっと幅広い国民的な論議が必要だ。

 日本の宇宙開発は小惑星探査機「はやぶさ」など平和利用の分野で独自の成果を積み重ねてきた。その理念は今後も大切にしたい。

=2018/02/26付 西日本新聞朝刊=

PR

社説 アクセスランキング

PR

注目のテーマ