建設現場 支える外国人 労災事故多発 賃金の未払い 課題は日本と共通

 韓国でも建設現場などで働く外国人労働者が増える中、賃金未払いや労災事故が多発している。韓国は単純労働でも外国人労働者を受け入れており、技能実習制度などで事実上制限している日本とは事情が異なるが、課題は似通っている。釜山市の建設現場の実態を取材した。 (釜山・竹次稔)

 「良い治療を早く受けていれば…」。中国山東省から出稼ぎで来た40代男性はこう悔しがる。

 男性は2017年4月、マンションの建設現場で作業中、乗っていた高さ1・4メートルの作業台が突然壊れ、転落。左耳の鼓膜破裂、鎖骨骨折、脳神経損傷の大けがを負った。原因は作業台の老朽化だった。

 会社指定の病院を転々とし、鎖骨の治療は7月まで受けたが、耳は消毒など簡単な処置しか施されず、症状は日に日に悪化した。男性は耳の早期治療を訴えたが、費用負担を渋る会社側は応じず、それどころか仕事ができなくなった男性を辞めさせようと嫌がらせまでしてきた。

 男性が駆け込んだのが、釜山市の委託事業として12年に設立された釜山外国人勤労者支援センターだ。男性は同センターの支援でようやく専門的な治療を受け、労災も認められた。だが症状は依然重く、仕事復帰のめどは立っていない。

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 「下請け業者は仕事を取るため、極端に安く元請けから受注し、安全管理の費用を削る。しわ寄せを受けるのが外国人。“使い捨て”同然の事例も多い」。同センターの中国人相談員、楊志怡さんはそう語る。

 センターには年間延べ約1万件の相談が寄せられる。楊さんは建設現場で働く外国人から受けた相談約460件(16年1月~17年10月)を分析。相談者の3分の2が短期ビザで入国した後などに不法滞在となった人たちという。前述の中国人男性も労災が認められるまでは不法滞在だった。

 相談内容は賃金未払いが最多の7割を占めた。建設現場では賃金などの雇用契約は口約束が大半で、韓国語があまりできない弱みにつけ込まれているという。

 さらに建設現場の複雑な下請け構造が救済を困難にしている。「未払い分を誰に請求すれば良いのか特定が難しい」。相談を受けて解決に至るのは全体の3割に満たないという。

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 釜山市の外国人登録者数は約4万3千人(17年9月現在)。不法滞在者はさらに数千人に上るとみられる。地元の市民団体「移住と人権研究所」は不法滞在者を含む、製造業や建設業の現場などで働く中国やベトナムなどの労働者を2万~3万人と推定する。

 韓国では外国人労働者を支援する国の機関が全国に約40カ所あるほか、ソウルなどの大都市には釜山の支援センターのような自治体が独自に設けた機関もある。一方、日本には同様の公的機関はほとんどない。

 釜山の支援センターは労働法に関する講座や韓国語教室など幅広い支援を行う。李仁敬(イインギョン)センター長は「国籍や在留資格に関係なく人権を守るのが私たちの仕事。センターの役割は今後さらに重要になる」と話す。

 ●「社会の一員」として支援 釜山で働く日本人相談員・村山一兵さん

 在韓外国人支援の市民団体「移住民とともに」(釜山市)で2012年から活動する日本人相談員、村山一兵さん(37)=写真=に、外国人労働者が増える日韓にとって何が必要か聞いた。

 労災などに遭った外国人の医療支援や労災申請の手助けなどを行っている。これまで400件を超える相談に応じてきた。外国人を特別な存在ではなく、社会の一員、社会的弱者として受け入れ、社会で支えるという考え方の転換、覚悟が国民にまず不可欠だ。

 日韓とも外国人労働者がいなければ成り立たない業種は増える一方だ。人数が増え、滞在年数が延びればホームレス化や性暴力など複雑で命に関わる問題も生じる。行政だけでは対処できない。専門知識を持った民間相談員の育成は両国の大きな課題だろう。韓国は行政や市民団体、宗教組織などの外国人支援が充実しており、日本にも参考になるはずだ。 (談)

=2018/02/26付 西日本新聞朝刊=

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