理屈抜き「音の道楽者」 私設博物館「音蔵」の宮崎真也館長(88)

西日本新聞

「音は楽しんだらいいんです」と話す宮崎真也さん 拡大

「音は楽しんだらいいんです」と話す宮崎真也さん

 「これはドイツ製の弦楽器・リュート。16世紀に作られた」「このジャズギターは、戦後に別府のダンスパーティーで弾いたときのもんじゃ」「この銅鑼(どら)。中国4千年の音がするで。たたいてみらんかえ」

 世界の民族楽器などを集めた私設博物館「音蔵」(国東市国東町田深)の館長、宮崎真也さん(88)は、ひとたび楽器の説明を始めると止まらない。400平方メートルほどの2階建て博物館にところ狭しと並ぶ楽器類。「数かぇ。数えてみたことがないから分からん」。歴史やエピソードなどひとしきりうんちくを傾けた後、アフガニスタンの弦楽器の弦を指ではじいた。閉じていた目を開けて「どや、えー音じゃろ」。

 国東町生まれ。大正琴やバイオリンのある家庭で育った。小学生のころ、自宅に1台しかない柱時計が壊れた。直そうと四隅を止めるネジを外したところ、中身がバラバラになって飛び出した。1週間かかって直し、再び鳴った「ボーン、ボーン、ボーン」の音が今でも心臓と頭に響き渡る。17歳でクラシックギターにはまった。聞いたことのない音色を出すギターを持っている先輩に一晩借りて、寝ずに練習。指先に血をにじませながら、古賀政男の「月の浜辺」をマスターした。大分師範学校(現大分大)の学生時代にはバンドを組み、学内外で演奏。その傍ら楽器を作る工場で働き、あらゆる楽器の製造技術を親方から盗んだ。

 小学校教諭になり、職員旅行で出かけた山口県萩市で、萩焼の土鈴のとりこにされた。「金属でも木でもない。土から音が出るとは」。衝撃だった。それ以来、全国各地の土鈴を集め始め、珍しい世界の楽器収集にものめり込んだ。

 博物館にあるのは、打楽器や管楽器、弦楽器など世界の逸品から、剥製のアルマジロを共鳴体にした珍しい楽器など。土鈴は500個はくだらない。ほかに木魚や笛、でんでん太鼓、サイレンが鳴る救急車のおもちゃまで「音の出るもの」がずらり。自分で買ったり旅行する知人に頼んだり、経験を生かして自ら作ったりしている。常に音に耳を凝らし、海岸なら貝殻や石ころを拾ってきて、たたいたりこすったり、穴を開けて吹いたりしては楽しんでいる。

 1989年に定年退職し、仲間4人と結成したボランティアグループで老人施設や辺地の学校などを巡り、演奏活動を始めた。施設では、お年寄りの健康維持につながるよう演奏を共に楽しみ、地域住民にはウクレレやホラ貝の吹き方も教えている。

 「音が好きですね。珍しい音、きれいな音。それを聞くだけで心が安らぎまっしょ。理屈なんてない。人間誰でもそうでしょ」

 収集した楽器類が増え「ただ置いておくだけではもったいない」と博物館で一般に公開し始めた。「ある人が言ったんですよ。これは『道楽者のすること』だと。その通り。私は『音の道楽者』です」

=2018/03/01付 西日本新聞朝刊=

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