「当番医強制は違法」提訴 津久見の開業医「診療の自由制限」

西日本新聞

 大分県津久見市で診療所を開業する40代男性医師が、市医師会が休日や夜間に救急患者を輪番で受け入れる当番医制度を会員に強制するのは「独占禁止法などに違反する」として、規定の無効確認を求めて大分地裁に提訴したことが28日分かった。

 訴状などによると、市医師会は昨年7月、当番医について「特段の事情がない限り、受けなければならない」という規定を決議した。

 これに対し、男性医師は当番医制度は必要としつつも「医師には診療の時間や場所を決める自由が保障されている。当番で医療スタッフの確保を迫られるなど、強制による負担は極めて大きい」と主張。医師会の規定は、事業者団体は、構成事業者の活動を不当に制限してはならないと定めた独禁法(8条4号)に抵触するとして提訴した。現在は、当番医の輪番から外れている。

 市医師会などによると、市内には15医療機関があり、眼科などの単科や70歳以上の医師を除いた11機関が当番医の対象。診療所は平日夜間(午後5~10時)と、日祝日(午前8時半~午後5時)の当番医を1カ月に3、4回担当する。報酬は、市の委託料を分配する形で夜間は7千円、休日は8500円が支払われる。

 市医師会事務局は「訴状が届いていないため詳細は分からないが、当番医への協力を引き続き依頼したい」と困惑。市医師会に所属する他の医師は「津久見市は医師が少なく、任意にして離脱者が増えれば、当番医制度が立ちゆかなくなる」と懸念を示した。

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■医師不足や高齢化背景 若手、地方を敬遠

 大分県津久見市の開業医が当番医の強制を「違法」と訴え、輪番を外れた背景には、医師の偏在や高齢化という地域医療の疲弊がある。九州では医師の負担を考慮し、小児科の夜間救急対応を縮小する動きも。現場からは「どこも同じ状況だ」と悲痛な声が上がる。

 「うちの病院は私1人で当番医を務めており、このままでは医療事故のリスクが高い」。提訴した男性医師は訴状で危機感を吐露する。津久見市医師会に所属する医師は、15機関の28人。市の人口はピーク時の半分以下の約1万7千人に減っており「今後、医師が増える見込みはない」(市健康推進課)状況だ。

 同県竹田市の救急病院、竹田医師会病院では「マンパワーが不足している」として、救急受け入れを断る例が増え、市民が不安を訴える事態になっている。

 「(2004年度導入の)新たな臨床研修制度に伴う都会への医師偏在が背景の一つだ」。医療関係者は指摘する。新制度では、それまでの大学病院の医局による差配でなく、新人医師が研修先を自由に選べるようになり、地方は敬遠された。最近は、救急対応が多い小児科や内科を避ける傾向があるという。

 宮崎市では、夜間の小児患者に対応する市夜間急病センター小児科を運営する同市郡医師会が、医師不足や高齢化を理由に「将来的な継続が難しい」として市などと協議している。

 センターは、地域の小児科の開業医約20人と宮崎大病院小児科の医師約10人が月1、2回の当直を交代で担当する。開業医の平均年齢は50代半ば。センターの高村一志所長は「4月以降は当直勤務を組むのも厳しい。続けたいが、自分たちの健康に関わる」と話す。

 小児科医の不足は都市部も例外ではない。福岡市は「医師不足で当直の頻度が高くなり、ゆとりがなくなった」として16年4月に、市内6カ所の急患診療施設のうち3カ所で小児科の診療を取りやめた。

 地域医療に詳しい原土井病院(福岡市東区)の原祐一医師は「当番医の問題は今後、他の地域でも間違いなく顕在化する」と指摘。行政の補助金を増やし、医師数に比較的余裕のある地域から当番医を招くなど、早急な対策の必要性を訴えた。

=2018/03/01付 西日本新聞朝刊=

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