教育の充実 改憲せずとも実現できる

西日本新聞

 政府に政策努力を求める規定をいちいち憲法に書き込む必要があるのだろうか。そもそも憲法を改正しないと実現できない課題なのか。疑問を禁じ得ない。

 自民党憲法改正推進本部で先月末、最終了承を受けた教育の充実に関する改憲条文案のことだ。

 憲法26条について、教育を受ける権利を定める1項と義務教育の無償などを明記する2項は維持しつつ、3項として「国は教育環境の整備に努めなければならない」などとする努力義務規定を新たに設けるという内容である。

 国が教育環境の整備に努力するのは当たり前だ。それとも憲法にわざわざ規定しないと、努力しない恐れがあるのだろうか。

 政権を担う自民党もそんなことは考えていないはずだ。では、なぜ教育の充実を「改憲4項目」の一つとして打ち出したのか。

 発端は改憲を悲願とする安倍晋三首相の発言だった。昨年5月、改憲項目として9条への自衛隊明記とともに突然、党内論議もないまま教育無償化を挙げた。

 衆参各議院の3分の2以上の賛成が必要な改憲の国会発議に向けて、教育無償化を改憲項目に掲げる日本維新の会に秋波を送ったのではないか。

 一方で、幼児教育から大学まで無償化には毎年4兆円を超える予算が新たに必要との試算もある。昨年末現在、1085兆円もの借金を抱える国に財源は用意できるか。誰もが抱く疑問だ。

 消費税増税の増収分などを当て込んだ首相の「人づくり革命」も、私立高校と認可外保育の無償化は財源のめどが立っていない。

 維新の会は取り込みたいが、財源に不安がある-そんな政治的思惑が交錯した妥協の産物の条文案だとしたら、あまりにも稚拙だ。国の在り方を定める憲法を軽んじていると言われても仕方ない。

 現行法規と財源の中で、どこまで教育を充実し、予算を振り向けるか-そうした国民的議論の中で無償化の範囲も合意が生まれるはずだ。少なくとも教育の努力義務は改憲のテーマとはいえない。

=2018/03/03付 西日本新聞朝刊=

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