ふるさと納税で「こども宅食」 東京・文京区寄付8000万円 官民協力、困窮家庭に食品

西日本新聞

 「返礼品」は子どもたちの笑顔-。ふるさと納税の寄付金を財源に、困窮する子育て世帯を支援する東京都文京区の「こども宅食」が注目を集めている。官民が共同運営し、2カ月に1度、約10キロ分の食品が宅配業者から配送される仕組みで、無料通信アプリLINE(ライン)を使って簡単に申し込める。返礼品はないが、目標額の4倍に当たる約8千万円の寄付が集まり、こども宅食の利用申請も見込みを大きく上回る。区には全国の自治体から視察や問い合わせが相次いでいる。

 こども宅食は、区内で児童扶養手当や就学援助を受給する世帯が対象。官民の支援が届きにくい生活困窮家庭に食品を届け、さらなる支援につなげて「貧困の連鎖」を断つのが狙い。昨年10月にスタートし、コメやレトルト食品、調味料などの食品を届けている。

 子どもの貧困問題などの取り組みで実績があるNPO法人の「フローレンス」や「キッズドア」(ともに東京)など民間5団体と区が対等な立場で共同事業体を設立。配送は高齢者の見守り活動などを展開する企業が担う。配送担当者が食品を渡す際に利用者と話をするなどしてつながりを持ち、相談に結びつく関係づくりを模索する。

 区内の子どもの貧困率調査データはないが、児童扶養手当や就学援助の受給状況から支援が必要な世帯は約千世帯に上ると分析している。初年度は150世帯の利用を見込んだが約460世帯から申し込みがあり、抽選で絞らざるを得なかった。今後、対象を拡大し希望する全世帯への提供を目指す。

 事業費はほぼ全額を寄付金でまかなう計画。目標額2千万円で昨年7月にふるさと納税の募集を開始した。共同事業体はこの取り組みを「モデル事業」と位置付けており、ノウハウを構築して公開する方針。

■「こども宅食」狙いは 文京区長に聞く 「行政が前に出ず、困窮家庭を守る」

 ふるさと納税の寄付金を財源に困窮する子育て世帯を支援する東京都文京区の「こども宅食」は、当初の目標額の4倍に当たる約8千万円の寄付が集まり、区には全国の自治体から視察や問い合わせが相次いでいる。2010年に自治体の首長として初めて育児休暇を取得、ベストマザー賞自治体部門を受賞した経験があり、先駆的な子育て支援に取り組む文京区の成沢広修区長に「こども宅食」の狙いを聞いた。

 -文京区がこうした取り組みに乗り出した狙いは

 「都心部の文京区にも貧困状態の子どもは確実にいる。ほかの地域よりも所得の格差が大きく、生活困窮家庭はより孤立しやすい状況だ」

 「子ども食堂や学習支援にも取り組んでいるが、官民の支援が届かない生活困窮家庭は少なくない。そうした家庭に支援を直接届けるのが『こども宅食』だ」

 -区と民間団体が対等な立場で協力する手法も注目されている。この手法のメリットは

 「今回は子どもの支援で豊富な経験とノウハウを持つNPO法人などと対等な立場で共同事業体をつくり、あえて行政が前面に出ない選択をした。行政だけでは協賛食品の集め方も分からず、公務員の頭からは利用申し込みに無料通信アプリLINE(ライン)を使うアイデアは出てくるはずもない。LINEで利用者から個別の相談が届いた事例もある」

 -あえて行政が前面に出ない選択をした理由は

 「民間の業者が配送を担うので周囲に貧困家庭だと知られずに届けることができる。行政が前に出ないことでプライバシーを守りながら、これまで把握できなかった生活困窮家庭とつながり、さらなる支援につなぐことができるのではないかと考えた」

 -こども宅食は「モデル事業」との位置付けだ

 「こうした支援が全国に広がることを期待し、ノウハウなどを公開する予定だ。地域性もあり、文京区と全く同じやり方ではできないかもしれないが、自治体ごとにカスタマイズすれば実現可能ではないか」

 -こども宅食を続けていく上で課題は

 「今後、事業を継続するためには資金も食品も必要だ。現在は2カ月に1度、3キロのコメを含む約10キロの食品を届けているが、利用申し込みが増えれば、もっと多くのコメが必要だ。文京区には農協もなく、コメの寄付が足りていない。生産地ではコメが余っていることもあると聞く。コメなどの食料品(保存食)の寄付もいただければありがたい」

 問い合わせは、文京区子ども家庭部子育て支援課=03(5803)1353。

文京区HP内「こども宅食」のページはこちら

=2018/03/04付 西日本新聞朝刊=

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