選択的夫婦別姓 「時代の要請」踏まえたい

西日本新聞

 希望があれば、結婚しても姓を変える必要はない-そう考える人が増えている。

 いわゆる選択的夫婦別姓である。内閣府が先月発表した世論調査によると、そのための法改正について「構わない」と答えた人は42・5%で、「必要ない」(29・3%)を上回った。5年前の調査では、いずれも30%台半ばで拮抗(きっこう)していた。

 女性の社会進出が進み、姓が変わると仕事などに支障が出ることが背景にある。今でも、夫婦いずれかの姓を選ぶ民法の規定にもかかわらず、結婚した後も旧姓を使う人は多い。

 ただ、これまでは姓を変えることの多い女性の問題と狭く捉えられがちだった。そうではなく、男女を問わず、多くの人に関わる問題だと提起する裁判が今年、東京地裁に起こされた。

 ソフトウエア開発会社の青野慶久社長らが「夫婦別姓を選べない戸籍法は憲法に反する」と国に損害賠償を求めて提訴した。

 戸籍法は婚姻届に「夫婦が称する氏」を記載するよう求めている。青野さんは妻の希望から、妻の姓を選んだという。

 仕事では「青野」を使い続けたところ、想像以上の弊害に見舞われた。パスポートや株主総会などで戸籍上の姓を強いられた上、銀行口座などの名前の変更手続きは相当に煩雑だった。多くの女性が感じてきたことだ。

 夫婦別姓を巡っては、法務省の審議会が1996年、導入するよう法相に答申した。しかし国民の間で議論は深まっておらず、改正法案の提出には至らなかった。

 最高裁は2015年、日本社会への定着を理由に、夫婦同姓の規定を合憲と判断した。もちろん同姓であることに絆を感じる人もいるだろう。一方で旧姓使用のデメリットから、婚姻届を出さずに事実婚を貫く夫婦もいるという。

 現在の制度で不利益を被る人がいるのなら、改善していくのは当然だ。姓を選ぶ自由は基本的人権にも関わる。時代の要請を踏まえた論議を加速させたい。

=2018/03/04付 西日本新聞朝刊=