数字は“魔物”ともいわれる…

西日本新聞

 数字は“魔物”ともいわれる。捉え方によって意味合いがさまざまに変わる。桁が大きく細かくなるほど、つい使ってしまう概数。それも要注意だ、と先輩記者に教えられてきた

▼実数は1万5895人。それを「1万5千人超」「約1万6千人」などとメディアは報じる。間違いではない。けれども、この数字こそ安易に丸めてはならない、と自戒する

▼東日本大震災による死者数。何の落ち度もなく、ある日突然奪われた尊い命の数である。それぞれに家族や友人がいた。それぞれが夢や希望を抱いて懸命に生きていた。残された人々の苦悩も続く

▼惨事の裾野はさらに広い。政府が発表した直近のデータによると、今なお安否が確認できない行方不明者は2539人。将来を悲観し、体調を崩すなどした震災関連死者3647人。避難生活者7万3349人…

▼いずれの数字も確定していない。身元不明の安置遺体もある。身元が判明すればその分、不明者数は減る。その一方で死者数は増え、悲しみは募る。震災関連死はなお絶えず、故郷に戻っても生活再建のめどが立たない人々もいる

▼政府は復興の進捗(しんちょく)をアピールするが、防潮堤の完成率46%、復興道路の整備率52%、鉄道の復旧率92%…。これらの数字をみても、大震災は現在進行形である、あの日から、きょうで7年。じわじわと進む記憶の風化と根深い風評被害。人の心にこそ“魔物”が潜む。

=2018/03/11付 西日本新聞朝刊=

PR

春秋(オピニオン) アクセスランキング

PR

注目のテーマ