ある公団が輸入品の横流しで不正な利益を上げ、大金が政界に流れた疑いが強まった…

西日本新聞

 ある公団が輸入品の横流しで不正な利益を上げ、大金が政界に流れた疑いが強まった。だが、鍵を握る公団の課長補佐が自殺し、検察の捜査は行き詰まる…。松本清張さんの小説「濁った陽」

▼事件を調べた主人公は、こう考える。〈汚職事件が起こると、中堅役人がいつも人柱的な犠牲者になる〉〈峻烈(しゅんれつ)な取り調べで動揺しているところへ、上司から保身のための苛烈(かれつ)な追及を受けるので、実直な者ほど自殺に追い込まれやすい〉〈彼らの自殺は精神的な他殺である〉

▼小説は実際の事件がモデル。〈一人の犠牲者によって上司の幾人かが、それにつながる外部の十数人かが助かり、のうのうと生きて暮らしている〉。権力者や組織を守るために個人を犠牲にする、太陽が濁ったような社会への作者の憤りが伝わる

▼森友学園への国有地売却を巡る決裁文書の書き換え疑惑が大問題となる中、売却を担当した近畿財務局の職員が自ら命を絶った。この人も「人柱的な犠牲者」ではなかったか

▼財務省は「事前の価格交渉はなかった」「価格は適正」「記録は破棄した」と言い張ってきた。全ては覆り、ついに改ざんを認めた

▼当時、理財局長だった佐川宣寿(のぶひさ)氏は「国会混乱の責任を取る」として国税庁長官を辞任したが、「何のために」という疑惑の核心は黙したまま。佐川氏もまた「人柱」なのだとしたら、濁った陽の下で、のうのうとしている誰かがいよう。

=2018/03/13付 西日本新聞朝刊=

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